分散分析とは?製造業での活用方法をわかりやすく解説|平均値の違いを比較する代表的な統計手法

はじめに

「設備A・B・Cで製品寸法の平均は異なるのか」「材料メーカーを変えると強度は改善するのか」。製造業では、複数条件の平均値を比較したい場面が数多くあります。

ただし、平均値の差だけを見ても、それが条件の効果なのか、偶然のばらつきなのかは判断できません。そこで使用するのが、分散分析(Analysis of Variance:ANOVA)です。

この記事では、分散分析の考え方を設備別の寸法データで説明し、一元配置・二元配置・一般線形モデル・分散成分分析の使い分けまで整理します。

この記事のポイント

・分散分析は、群間変動と群内変動を比較して平均値の差を評価します。

・有意差があっても、どの群が異なるかは多重比較で確認します。

・比較する要因数と目的に応じて、適切な分散分析を選びます。

分散分析とは?

分散分析とは、複数のグループ間で平均値に統計的な差があるかを調べる手法です。設備、材料、加工条件などによって品質特性が変わるかを評価するときに使用します。

名前に「分散」と付くのは、平均値を直接見比べるのではなく、グループ間のばらつきとグループ内のばらつきを比較するためです。条件間の差が、同じ条件内で自然に生じるばらつきより十分大きいかを検定します。

例えば、設備A・B・Cで作った製品の平均寸法に差が見えても、測定値自体のばらつきが大きければ設備差とは言い切れません。分散分析は、この判断をF値とp値によって客観化します。

分散分析の考え方

分散分析では、「グループ間の平均値に差があるか」を調べます。

しかし、実際には平均値そのものを直接比較しているわけではありません。

ここでは、設備A・設備B・設備Cの3台の設備で製造した製品について、それぞれ5個ずつ製品寸法を測定した例で考えてみましょう。

設備A 設備B 設備C
10.02 10.10 9.91
9.99 10.08 9.89
10.01 10.11 9.92
10.03 10.09 9.90
9.98 10.12 9.88

このデータを見ると、設備Bは全体的に寸法が大きく、設備Cは小さいように見えます。

しかし、本当に設備によって製品寸法が異なるのでしょうか。それとも、たまたまこのようなデータになっただけなのでしょうか。

この疑問を解決するために、分散分析では次の2種類のばらつきを比較します。

・群間変動(設備間のばらつき)
・群内変動(同じ設備内でのばらつき)

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

■群間変動とは?

群間変動とは、各グループの平均値同士のばらつきのことです。

まずは、先ほど取得した5サンプルのデータから、それぞれの設備の平均値を求めてみましょう。

📊 各設備の平均値を計算する

設備A

(10.02 + 9.99 + 10.01 + 10.03 + 9.98)
÷ 5
平均 = 10.006 mm

設備B

(10.10 + 10.08 + 10.11 + 10.09 + 10.12)
÷ 5
平均 = 10.100 mm

設備C

(9.91 + 9.89 + 9.92 + 9.90 + 9.88)
÷ 5
平均 = 9.900 mm

得られた設備ごとの平均値を比較すると、設備Bの平均値が最も高く、設備Cの平均値が最も低いことが分かります。
つまり、設備ごとの平均値がどれくらい離れているかが「群間変動」です。

今回の例では、設備Bと設備Cの平均値には約0.20 mmの差があります。

この差を見ると、「設備によって製品寸法が変化しているのではないか」と考えたくなります。

しかし、この段階ではまだ結論を出すことはできません。なぜなら、設備ごとの平均値に違いがあっても、その差が偶然のばらつきによって生じた可能性もあるためです。

そこで次に確認するのが、同じ設備の中でどれくらいデータがばらついているのかを表す「群内変動」です。

■群内変動とは?

一方、群内変動とは、同じグループ内でデータがどれくらいばらついているかを表します。

先ほどは設備ごとの平均値を比較しましたが、今度は設備Aだけに注目してみましょう。

設備Aで測定した5個の製品寸法は、次のようになっています。

測定番号 製品寸法(mm)
1 10.02
2 9.99
3 10.01
4 10.03
5 9.98

設備Aの平均値は 10.006 mm でした。

それぞれの測定値と平均値を比較すると、平均値から少しずつバラついていることがわかります。
このように、同じ設備で製造した製品であっても、測定値は平均値の周りに少しずつばらついています。

このばらつきを「群内変動」と呼びます。

分散分析では、この群内変動を基準として、「設備間の平均値の差(群間変動)が十分に大きいかどうか」を判断していきます。

■群間変動と群内変動を比較する

分散分析では、この2つのばらつきを比較します。

もし設備ごとの平均値が大きく離れている一方で、それぞれの設備内ではデータのばらつきが小さい場合は、「設備の違い」が製品寸法に影響している可能性が高いと判断できます。

逆に、設備ごとの平均値に多少の違いがあっても、各設備内のデータが大きくばらついている場合は、その差は偶然によるものと考えられます。

つまり、分散分析では次のような考え方で平均値の違いを判断しています。

群間変動と群内変動の関係 考えられること
群間変動 > 群内変動 設備や条件の違いによって、平均値が変化している可能性が高い。
群間変動 ≒ 群内変動 平均値の差は、偶然のばらつきによって生じた可能性が高い。

このように、「2種類のばらつき」を比較することが、分散分析の最も重要な考え方です。

そしてこの考え方は、後に出てくる一元配置分散分析や二元配置分散分析といったいずれの手法においても共通です。

分散分析でわかること

■ 条件によって平均値が異なる可能性があるか

分散分析では、設備・材料・加工条件などによって平均値に差がある可能性を評価できます。p値が事前に定めた有意水準より小さければ、「すべての群の母平均が等しい」という帰無仮説を棄却します。

有意差があるとは、少なくとも1つの群の平均値が異なることを示す結果です。どの群同士が異なるかは、Tukey法などの多重比較で追加確認します。

■ 複数要因のうち、どの要因が影響している可能性があるか

二元配置分散分析や一般線形モデルでは、設備・材料・温度など複数の要因を同時に評価できます。これは改善対象の優先順位を考える手掛かりになりますが、統計的有意差だけでなく、差の大きさや工程上の重要性も合わせて判断します。

一方、p値が有意水準以上でも「差がない」と証明されたわけではありません。サンプルサイズや検出力、推定値の信頼区間も確認する必要があります。

【重要】分散分析にはいくつか種類がある

これまで説明してきた「分散分析」という考え方は共通ですが、比較したい要因の数や解析したい内容によって、使用する手法が異なります。

例えば、設備だけを比較したい場合と、設備と材料を同時に比較したい場合では、使用する分散分析は異なります。また、3つ以上の要因を同時に解析したい場合には、さらに別の手法を選択します。

そのため、まずは「何を比較したいのか(要因はいくつあるのか)」を整理した上で、適切な分散分析を選択することが重要です。

代表的な分散分析の種類を以下にまとめます。

手法 選択するケース 詳細記事
一元配置分散分析 要因が1つの場合(例:設備のみ、材料のみ) 一元配置分散分析の記事
二元配置分散分析 要因が2つの場合(例:設備×材料) 二元配置分散分析の記事
一般線形モデル(GLM) 要因が3つ以上、または共変量を含めて解析したい場合 一般線形モデルの記事
分散成分分析 各要因が全体のばらつきへどの程度寄与しているかを評価したい場合 分散成分分析の記事

それぞれの手法では、解析できる内容や前提条件、結果の見方が異なります。

本記事では分散分析の基本的な考え方を解説しましたが、実際の解析手順や分散分析表の読み方、結果の解釈については、それぞれの解説記事で詳しく紹介しています。目的に応じて、各記事もあわせてご覧ください。

Stat Lab Analyticsで分散分析を試す

分散分析を理解したら、実際のデータで試してみましょう

無料統計解析ソフト「Stat Lab Analytics(StatLA)」では、ブラウザ上で一元配置分散分析を実行できます。データを入力すると、分散分析表、F値、p値、グループごとの基本統計量を確認できます。

分散分析を行う際の注意点

分散分析を適切に使用するには、モデルの前提条件と結果の解釈上の限界を確認する必要があります。

■ 残差がおおむね正規分布に従うこと

正規性の前提は、厳密には各測定値そのものではなくモデルの残差に対するものです。残差が大きく正規分布から外れる場合は、外れ値やデータ構造を確認し、必要に応じて変数変換やノンパラメトリック手法を検討します。

✔ あわせて読みたい
正規分布とは?統計で最も重要な分布をわかりやすく解説【統計基礎】

統計解析をするうえで必ず理解しておきたい、正規分布について数理・特徴を網羅!

■ グループ間の分散が大きく異ならないこと

各グループのばらつき(分散)が極端に異なる場合は、分散分析の結果が適切でなくなることがあります。

そのため、解析前には等分散性を確認することが重要です。

■ データが互いに独立していること

各測定値は、お互いに影響しない独立したデータである必要があります。

例えば、同じ製品を繰り返し測定したデータや、時系列データなどでは、通常の分散分析が適さない場合があります。

✔ あわせて読みたい
サンプリング誤差とは?測定誤差との違い・原因・対策を分かりやすく解説

分散分析や仮説検定を正しく理解するためには、「サンプリング誤差」の考え方が欠かせません。測定誤差との違いや発生原因、誤差を小さくするための対策をわかりやすく解説します。

■ 有意差があっても「どの群が違うか」は分からない

分散分析では、「少なくとも1つのグループ間で平均値に差があるか」は判断できますが、どのグループ同士に差があるかまでは分かりません。

そのため、差があるグループを特定したい場合は、Tukey法やBonferroni法などの多重比較を実施する必要があります。

まとめ

分散分析は、群間変動と群内変動を比較し、複数グループの平均値に差がある可能性を評価する手法です。製造業では、設備・材料・加工条件などの比較に活用できます。

解析では、要因数に合った手法を選び、正規性・等分散性・独立性を確認します。有意差が得られた後は、多重比較や差の大きさも確認し、実務上の判断につなげることが重要です。

Q. 分散分析は何個のグループから使用できますか?
A. 分散分析は3つ以上のグループの平均値を比較する場合によく使用されます。

2グループのみを比較する場合は、一般的にt検定を使用します。なお、2グループに対する一元配置分散分析とt検定は、同じ結果になることが知られています。
Q. 分散分析で有意差があれば、どのグループが違うかも分かりますか?
A. いいえ。分散分析だけで分かるのは、「少なくとも1つのグループ間で平均値に差がある」ということです。

どのグループ同士に差があるかを確認したい場合は、Tukey法やBonferroni法などの多重比較を実施する必要があります。
Q. 分散分析を行う前に確認しておくことはありますか?
A. はい。分散分析では、正規性・等分散性・データの独立性などの前提条件を満たしていることが重要です。

これらの前提条件を満たさない場合は、データ変換やノンパラメトリック手法など、別の解析方法を検討することがあります。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール