Welchのt検定とは?|Excelでの計算方法・p値の求め方を具体例でわかりやすく解説

「2つの設備で平均値が違う。でも、その違いは偶然のばらつきによるものかもしれない」。そんなときに使う方法の1つが、ウェルチ(Welch)のt検定です。

ウェルチのt検定は、独立した2つのグループの平均値に統計的な差があるかを調べる方法です。2群の分散が等しいことを前提としないため、設備や製造条件によってデータのばらつきが異なる場合にも利用できます。

今回は、設備A・Bの5個ずつのデータを使って、平均・分散からt値、p値までを順番に計算します。さらに、平均差の95%信頼区間も求め、「統計的に差があるか」だけでなく「どれくらい違うか」まで確認していきましょう。

Excelでの計算方法も紹介するので、実際に手を動かしながら理解できる内容になっています。

▼この記事のポイント

① ウェルチのt検定の基本
どのような場面で使うのか、通常のt検定との違いを理解する

② 具体例を使った計算方法
設備A・Bの5個ずつのデータから、平均・分散・t値・p値を順番に計算する

③ 検定結果の解釈
p値と95%信頼区間から、統計的な有意差と平均差の大きさを確認する

ウェルチのt検定とは?

ウェルチのt検定は、独立した2群の母平均を比較する方法です。2群の母分散が等しいとは仮定せず、それぞれのデータのばらつきを計算に使います。データ数が異なる場合にも利用できます。

Welchのt検定|検定統計量の説明

ウェルチのt検定では、2群の平均値の差を、それぞれのデータのばらつきとサンプルサイズを考慮して標準化し、検定統計量(t値)を求めます。

検定統計量は、次の式で計算します。

Welchのt検定の検定統計量
t = x̄A − x̄B√sA2nA+sB2nB
分子:2群の平均値の差 / 分母:平均差の標準誤差

検定統計量の記号と意味

ここで、各記号は次の意味を表します。

・x̄A、x̄B:設備A・Bの標本平均
・sA2、sB2:設備A・Bの不偏分散
・nA、nB:設備A・Bのサンプルサイズ

式の分子は「2群の平均値の差」、分母は「平均差の標準誤差」を表しています。

つまり、平均値の差がデータのばらつきに対してどの程度大きいかを、t値として数値化しています。

ウェルチのt検定では、2群の分散をそれぞれ計算に使用するため、母分散が等しいと仮定する必要がありません。

求めたt値と、別途計算する自由度を用いてt分布からp値を算出し、統計的な有意差を判断します。

✓ 使う場面を確認

Welchのt検定は、 別々の製品や人から得た、独立した2群のデータ を比較する場合に使用します。

一方、同じ人の前後比較など、 対応のあるデータには 「対応のあるt検定」 を使用します。

また、今回のようにデータ数が少ない場合は、 各群の母集団の分布が概ね正規分布とみなせること も大切です。

例題:設備Aと設備Bの平均に差はある?

2つの設備で製造した別々の製品を5個ずつ取り出し、引張荷重を測定したとします。以下は計算を理解するための架空データです。同じ行の値に対応関係はありません。

設備A(N)設備B(N)
4851
4953
5055
5157
5259
Excelで試す場合:A1・B1を見出しにして、A2:A6・B2:B6に数値を入力します。

検定では、まず「設備AとBの母平均は等しい」を帰無仮説にします。今回は差の方向を限定せず、「母平均が異なる」を対立仮説とする両側検定を、有意水準5%で行います。

5つのステップで計算する

① 平均と分散を求める

平均は、データの合計を個数で割ります。設備Aは合計250、設備Bは合計275なので、平均はそれぞれ50 N、55 Nです。

検定に使う分散は不偏分散です。「各値と平均の差」を2乗して足し、データ数から1を引いた値で割ります。今回は両群とも5個なので、分母は4です。

平均とばらつきを準備する
x̄A = 250 ÷ 5 = 50 / x̄B = 275 ÷ 5 = 55
sA2 = (−2)2 + (−1)2 + 02 + 12 + 225 − 1= 10 ÷ 4 = 2.5
sB2 = (−4)2 + (−2)2 + 02 + 22 + 425 − 1= 40 ÷ 4 = 10
x̄は平均、s²は不偏分散。分散の単位はN²です。

設備Bの分散はAの4倍です。この違いをそのまま使って、平均差の不確かさを求めます。

② 平均差を標準誤差で割り、t値を求める

平均差は「A − B」で統一します。差は50 − 55 = −5 Nです。これを平均差の標準誤差(SE)で割ったものがt値です。標準誤差は、標本平均の差がどれくらい変動するかを表します。

t値 = 平均差 ÷ 標準誤差
SE = √(sA2/nA + sB2/nB)
= √(2.5/5 + 10/5) = √2.5 ≈ 1.581
t = x̄A − x̄BSE= 50 − 55√2.5 ≈ −3.162
nはデータ数。今回はnA = nB = 5です。

符号がマイナスなのは、Aの平均がBより小さいためです。差の大きさは、標準誤差の約3.16倍になっています。

③ 自由度を求める

次に、p値を求めるためのt分布を決めます。ウェルチの検定では、分散とデータ数に応じて自由度を調整します。この自由度は小数になることがあります。

ここでは「分散 ÷ データ数」を先に計算すると、Aは2.5/5 = 0.5、Bは10/5 = 2です。これらをWelch–Satterthwaiteの式に入れます。

自由度は、各群の分散とデータ数から計算する
ν = (0.5 + 2)20.52/(5 − 1) + 22/(5 − 1)
= 6.25 ÷ 1.0625 ≈ 5.882
ν(ニュー)は自由度。p値や信頼区間の計算では、小数を保持します。

④ p値で「差があるか」を判断する

t値−3.162、自由度5.882のt分布から求める両側p値は、約0.0200です。p値は「母平均が等しいと仮定したとき、今回以上に極端なt値が得られる確率」です。

0.0200 < 0.05なので、帰無仮説を棄却します。有意水準5%では、設備AとBの母平均に統計的に有意な差があると判断します。

Excelで確認する場合は、先ほどのデータをA2:A6、B2:B6に入力し、D2に次の関数を入力してください。

Excel FUNCTION

両側p値をExcelで確認する

D2
=T.TEST(A2:A6,B2:B6,2,3)
2は両側検定、3は等分散を仮定しない2標本のt検定。結果は約0.020039です。

⑤ 95%信頼区間で「どれくらい違うか」を見る

p値だけでは、差の大きさはわかりません。そこで、母平均の差「A − B」の95%信頼区間も求めます。計算は「平均差 ± tの臨界値 × 標準誤差」です。

自由度5.882のt分布で、両側95%に対応する臨界値は約2.459です。これを使うと、次の区間になります。

母平均の差「A − B」の95%信頼区間
−5 ± 2.459 × 1.581 ≈ −5 ± 3.888
−8.89 N ~ −1.11 N
計算には丸める前の値を使用し、表示だけを丸めています。

区間全体がマイナスで、0を含みません。Bの母平均はAより高いと推定され、差を「B − A」で表すと、95%信頼区間は1.11~8.89 Nです。p値による判断とも一致しています。

Excelテンプレートをダウンロード

測定データを入力すると、平均・不偏分散・標準誤差・t値・自由度から、p値・有意差の判定・平均差の信頼区間まで自動計算するExcelテンプレートです。各群100個まで入力でき、2群のデータ数が異なる場合にも使えます。

テンプレートの使い方

  1. 例題データを自分のデータに置き換える
    シート「Welch検定」の黄色の入力欄にある例題データを削除し、A群をC7:C106、B群をD7:D106に入力します。各群2個以上の数値を入力してください。
  2. 有意水準を設定する
    G4セルの有意水準αを確認します。初期値は0.05(5%)で、変更すると判定基準と信頼水準(1 − α)も更新されます。
  3. 途中計算と検定結果を確認する
    右側の「基本統計量」「t検定の途中計算」で計算過程を、「検定結果」でp値・有意差の判定・信頼区間を確認します。数式が入った結果欄は変更しないでください。

空欄は無視し、0は測定値として数えます。本テンプレートは独立した2群の両側検定用です。同じ行の値に対応関係はなく、平均差と信頼区間は「A − B」で表示します。初期設定の例題では、p値は約0.0200、平均差の95%信頼区間は約−8.89~−1.11 Nになります。

結果を実務で使うときのポイント

今回の標本平均の差は5 N、p値は約0.0200でした。ただし、統計的に有意な差と、実務上重要な差は別です。製品の規格や改善目標と照らし合わせて、5 Nの違いに意味があるかを考えましょう。

また、5個ずつという数は計算を追いやすくするための設定です。実際の検証では、必要な精度に応じたデータ数を検討し、測定の独立性、外れ値、分布の形も確認します。

ウェルチの検定は、平均と分散 → t値 → 自由度 → p値 → 信頼区間の順に見ると理解しやすくなります。まずはこの10個のデータで、手計算の流れとExcelの結果を確かめてみてください。

Excelのメニューから検定する手順は、Excelでt検定を行う方法でも解説しています。

参考資料:NIST:2標本のt検定とWelch–Satterthwaite自由度/Microsoft:T.TEST関数/R公式:t検定と信頼区間

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