
品質改善や条件最適化を進める中で、
「実験はしたいけれど、全部の組合せを試すのは難しい…」
という場面はとても多いです。
たとえば、温度・時間・圧力・材料など、確認したい因子が増えてくると、必要な実験回数は一気に増えてしまいます。
そんなときによく使われるのが、直交表実験です。
直交表実験は、すべての組合せを試さなくても、限られた実験回数の中で複数因子の影響を効率よく見やすくする方法です。
前回の記事では、実験計画法の全体像として、
①全因子実験
②一部実施実験
③直交表実験
という整理を行いました。
実験計画法をこれから学びたい方必見!概念について説明した超入門記事
今回はその続きとして、直交表実験とは何かを超基本レベルでやさしく整理していきます。
・代表的な直交表には、2水準系(L4・L8・L16)や3水準系(L9・L27)がある
・例えば4因子2水準の場合、L8直交表を使うことで効率よく評価できる
直交表実験とは何か?
直交表実験とは、複数の因子を、できるだけ少ない実験回数で、偏りを抑えながら評価するための実験の組み方です。
実験計画法では、因子や水準が増えるほど、必要な実験回数が増えやすくなります。
たとえば、4因子2水準で全因子実験を行う場合、必要な実験回数は
2 × 2 × 2 × 2 = 16通り
になります。
16回であれば実施できるケースもありますが、繰返し実験や評価工数まで含めると、現場では負担が大きくなることもあります。
さらに因子数が増えると、実験回数はもっと急激に増えていきます。
そこで、すべての組合せを試さなくても、一定のルールに従って条件を選び、効率よく因子の影響を見ようという考え方が使われます。
→それが直交表実験です。
直交表とは?
直交表とは、実験条件を並べるための決まった表です。
各行が1つの実験条件、各列が因子を表し、そこに各因子の水準をルールに従って配置していきます。
直交表にはいくつか種類がありますが、超基本としては、まず2水準系と3水準系があることを押さえると分かりやすいです。
2水準系の代表例
| 直交表 | 実験回数 | 主な用途(目安) |
|---|---|---|
| L4 | 4回 | 少数因子(2〜3因子程度)の検討 |
| L8 | 8回 | 中程度(4〜7因子程度)の検討 |
| L16 | 16回 | 多因子(8因子以上)の検討 |
3水準系の代表例
| 直交表 | 実験回数 | 主な用途(目安) |
|---|---|---|
| L9 | 9回 | 少数因子(3〜4因子程度)の検討 |
| L27 | 27回 | 多因子(5因子以上)の検討 |
ここでいう “L” は直交表の種類を表しており、後ろの数字は実験回数を表します。
たとえば、L8なら8回、L9なら9回、L16なら16回の実験を行う直交表です。

つまり直交表は、単に「実験回数を減らす表」ではなく、
因子の水準ができるだけバランスよく現れるように、あらかじめ整理された実験条件表と考えるとイメージしやすいです。
因子数と水準数で選べる直交表の一覧 ※重要
直交表は、見たい因子数や水準数に応じて使い分けます。
まずは入門として、代表的なものをざっくり一覧で押さえておくと便利です。
※実際には、交互作用をどう扱うか、どの列に何を割り付けるかなども重要ですが、まずは
「2水準か3水準か」「因子数に対して何回実験できるか」
で大まかに考えると入りやすいです。
| 水準系 | 因子数(最大) | 代表的な直交表 | 実験回数 | 向いている場面のイメージ |
|---|---|---|---|---|
| 2水準系 | 3 | L4 | 4 | 少ない因子でまず比較したいとき |
| 2水準系 | 7 | L8 | 8 | 複数の因子を効率よく調べたいとき |
| 2水準系 | 15 | L16 | 16 | 因子数がやや多い条件を扱いたいとき |
| 3水準系 | 4 | L9 | 9 | 3水準の因子を少ない実験回数で確認したいとき |
| 3水準系 | 13 | L27 | 27 | 3水準の因子が多く、本格的に比較したいとき |
事例|L8直交表で4因子2水準の実験を考える

ここでは、L8直交表の具体例として、4因子2水準の実験を考えてみます。
たとえば、ある製造条件について、次の4つの因子を評価したいとします。
| 因子 | 水準① | 水準② |
|---|---|---|
| A:温度 | 低 | 高 |
| B:時間 | 短 | 長 |
| C:圧力 | 低 | 高 |
| D:材料条件 | 材料A | 材料B |
4因子2水準なので、全因子実験なら本来は
2⁴ = 16通り
の実験が必要です(めちゃくちゃ大変です)。
| 実験No. | A:温度 | B:時間 | C:圧力 | D:材料条件 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 低 | 短 | 低 | 材料A |
| 2 | 低 | 短 | 低 | 材料B |
| 3 | 低 | 短 | 高 | 材料A |
| 4 | 低 | 短 | 高 | 材料B |
| 5 | 低 | 長 | 低 | 材料A |
| 6 | 低 | 長 | 低 | 材料B |
| 7 | 低 | 長 | 高 | 材料A |
| 8 | 低 | 長 | 高 | 材料B |
| 9 | 高 | 短 | 低 | 材料A |
| 10 | 高 | 短 | 低 | 材料B |
| 11 | 高 | 短 | 高 | 材料A |
| 12 | 高 | 短 | 高 | 材料B |
| 13 | 高 | 長 | 低 | 材料A |
| 14 | 高 | 長 | 低 | 材料B |
| 15 | 高 | 長 | 高 | 材料A |
| 16 | 高 | 長 | 高 | 材料B |
一方、L8直交表を使えば、8回の実験で因子の影響を効率よく見ることができます。
●L8直交表
以下が実際のL8直交表です。
この表に今回の「因子」と「水準」を当てはめることで実験計画を立てていきます。
| 実験No. | A | B | C | D |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
| 2 | 1 | 1 | 2 | 2 |
| 3 | 1 | 2 | 1 | 2 |
| 4 | 1 | 2 | 2 | 1 |
| 5 | 2 | 1 | 1 | 2 |
| 6 | 2 | 1 | 2 | 1 |
| 7 | 2 | 2 | 1 | 1 |
| 8 | 2 | 2 | 2 | 2 |
まず、水準についてですが
・1:低水準
・2:高水準
のように置けば、各実験条件が決まります。
たとえば実験No.1は、
・温度:低
・時間:短
・圧力:低
・材料条件:材料A
になります。
一方実験No.8は、
・温度:高
・時間:長
・圧力:高
・材料条件:材料B
になります。
このように、各因子の1と2が偏らないように配置されているため、少ない回数でも各因子の影響を比較しやすくなります。
そして、この条件下で実際に得られる直交表が以下です↓
| 実験No. | 温度 | 時間 | 圧力 | 材料条件 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 低 | 短 | 低 | 材料A |
| 2 | 低 | 短 | 高 | 材料B |
| 3 | 低 | 長 | 低 | 材料B |
| 4 | 低 | 長 | 高 | 材料A |
| 5 | 高 | 短 | 低 | 材料B |
| 6 | 高 | 短 | 高 | 材料A |
| 7 | 高 | 長 | 低 | 材料A |
| 8 | 高 | 長 | 高 | 材料B |
あとはこの直交表の条件に従って、実験No1~8の順にデータを取得すれば解析することができます!
解析では分散分析(ANOVA)という手法を用いることで
・各因子が評価特性に対して統計的に有意に影響しているか?(分散分析表)
・因子の水準が変わることで、どのように影響するか?(要因効果図)
といった情報を得ることができます(次項で詳しく説明します!)。
●実験結果の解析(ANOVA)
まず、直交表の右側に実験結果の値を入力します。
| 実験No. | 温度 | 時間 | 圧力 | 材料条件 | 測定値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 低 | 短 | 低 | 材料A | 52 |
| 2 | 低 | 短 | 高 | 材料B | 58 |
| 3 | 低 | 長 | 低 | 材料B | 63 |
| 4 | 低 | 長 | 高 | 材料A | 60 |
| 5 | 高 | 短 | 低 | 材料B | 72 |
| 6 | 高 | 短 | 高 | 材料A | 75 |
| 7 | 高 | 長 | 低 | 材料A | 78 |
| 8 | 高 | 長 | 高 | 材料B | 85 |
次に、この結果を使って「分散分析表」と「要因効果プロット」を作成します。
作り方を説明すると長くなってしまうので、今回はExcelテンプレートを作成しました。
これを元に、得られた結果をどう解釈するかを学んでいきましょう!
(作成方法が気になる方は関数を確認してみてください。詳しく学びたい方はココナラより問い合わせくださいね)
●結果の解釈(ANOVA)
Excelテンプレートで分散分析を実行したら、次に重要なのが結果の解釈です。
ここでは、実際の出力結果を確認しながら「何をどう読み取るか」を整理していきます。

(1)分散分析表の読み方
分散分析表では、今回設定した各因子が
測定値にどれだけ影響しているか(統計的に有意か)を確認できます。
特に重要なのが、一番右の「p値」です。

■p値の判断基準
p値は以下の基準により「統計的に有意に結果に影響するか」を判断することができます。
| p値 | 解釈 |
|---|---|
| p < 0.05 | 統計的に有意に影響している |
| p < 0.10 | 有意な影響が示唆される(やや弱いが無視できない) |
今回の実験結果からは、以下のように判断できます。
| 因子 | 結果の解釈 |
|---|---|
| 温度・時間 | 統計的に有意に影響 |
| 圧力・材料条件 | 影響が示唆される |
統計的仮説検定で必ず出てくる「p値」についてわかりやすく解説!
(2)要因効果プロット
分散分析表が「統計的な裏付け」だとすると、
要因効果プロットは直感的に理解するための図です。
各因子について「水準が違いことでの傾向」や「影響の程度」を確認することができます

例えば、温度について確認すると
・温度が「低」 → 測定値は低い
・温度が「高」 → 測定値は高い
といった傾向が確認できます。
また、測定値に与える影響の程度としては「温度」>「時間」>「圧力」>「材料条件」
の順に測定値への影響があることが見て取れます
分散分析(ANOVA)では、この2点を視覚的に確認することができます。
※この結果はどの直交表を用いても同様です!
なぜ直交表だと効率よく見られるのか?
直交表実験が便利なのは、各因子の水準ができるだけバランスよく登場するように組まれているからです。
もし実験条件を感覚で選んでしまうと、
- ある因子の高水準ばかりが多い
- 特定の組合せに偏っている
- どの因子が効いたのか分かりにくい
といった問題が起こりやすくなります。
一方、直交表では、各因子について水準の出現回数および水準の組み合わせが同数回になるようによう工夫されています。
そのため、例えば因子Aの影響を確認する際、他のB~Dの因子の影響は数理的にキャンセルされるため
因子Aのもつ評価特性への単体の効果を確認できるわけです。これが直交表の優れた点であり、最大のメリットです。
※↑に掲載されている直交表を改めて確認してみてください。いずれの因子においてもこのことが確認できます。
直交表実験はどんな場面で向いているか?
直交表実験は、特に次のような場面で向いています。
直交表はテクニカルで効率よいですが、すべてのケースで必ずしも有効というわけではないので整理しておきましょう。
1. 因子が多く、全因子実験が重すぎるとき
因子数が増えると、全因子実験はすぐに現実的でなくなります。
そんなとき、まずは直交表で主要因子の影響を見にいく方法が有効です。
2. 実験回数に制約があるとき
試作コスト、評価時間、サンプル数、設備稼働時間など、現場には多くの制約があります。
直交表は、その制約の中で実験を組みやすい方法です。
3. まずは影響の大きい因子を絞り込みたいとき
いきなり厳密な最適化を行う前に、
まず「どの因子が効いていそうか」を把握したい段階で特に使いやすいです。
直交表実験で注意したいこと
直交表はとても便利ですが、万能ではありません。
特に注意したいのは、すべての情報を自由に見られるわけではないという点です。
全因子実験では、すべての組合せを試すため、交互作用も比較的追いやすくなります。
一方で直交表実験では、限られた回数で効率化している分、交互作用の扱いには注意が必要です。
まとめ
直交表実験とは、
全部の組合せは試せないけれど、できるだけ効率よく複数因子の影響を見たい
というときに役立つ方法です。
特に現場では、時間・コスト・サンプル数に制約があることが多いため、
直交表実験はとても実践的な考え方です。
今回のポイントをまとめると、次の通りです。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| ポイント1 | 直交表実験は、少ない実験回数で複数因子を効率よく評価する方法 |
| ポイント2 | 代表的な直交表には、2水準系のL4・L8・L16、3水準系のL9・L27がある |
| ポイント3 | 4因子2水準のような条件では、L8直交表を使って効率よく評価できる |
| ポイント4 | ただし、交互作用の扱いなどには注意が必要 |
まずは、「直交表は、偏りを抑えながら少ない回数で比較するための表」
と理解できれば、入り口としては十分です。
実験計画法については独学よりも、体系的に学ぶ方がより早く正確に理解できます。
また、解析については今回はExcelで実施しましたが統計解析ソフトを用いて分析することが一般的です。
(エクセル関数を毎回組むのは手間です。。)
実験計画法や分散分析について学びたい方は、サイドバーのココナラより問い合わせください
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