超基本|実験計画法とは?全因子実験・一部実施実験・直交表実験の考え方をやさしく解説

実験計画法の基本を表すイメージ

はじめに

実験計画法とは、品質改善や製品開発で知りたいことを明確にするために、実験条件を計画的に組む考え方です。思いついた条件を順番に試すだけでは、どの因子が結果に影響したのか分かりにくく、実験回数も増えやすくなります。

この記事では、実験計画法の入口として、全因子実験・一部実施実験・直交表実験の考え方と選び方を、製造業の例を交えてやさしく整理します。

この記事でわかること

  • 実験計画法とは何か
  • 全因子実験と一部実施実験の違い
  • 直交表を使う理由
  • 目的や実験回数に応じた選び方

実験計画法とは?

実験計画法(Design of Experiments:DOE)とは、目的に対して必要な情報を得られるように、実験条件や実施順序、データの取り方を計画する方法です。

たとえば、製品強度に影響する条件を調べる場合、温度・圧力・加工時間などをばらばらに変更すると、それぞれの影響を区別しにくくなります。あらかじめ条件の組合せを計画すれば、因子の効果を比較しやすくなり、限られた時間やコストも有効に使えます。

計画しない場合の課題 起こりやすいこと
因子の影響が不明確どの条件が結果に影響したのか分かりにくい
実験回数の増加必要以上に多くの条件を試してしまう
条件の偏り一部の条件だけを見て誤った結論を出す可能性がある

実験計画法の全体像

実験計画法は、直交表だけを指す言葉ではありません。大きくは、すべての条件を確認する方法と、全組合せの一部を計画的に選んで実験回数を減らす方法に整理できます。

すべての条件を確認する

全因子実験:設定した因子と水準のすべての組合せを実施します。

実験回数を減らす

一部実施実験:全組合せの一部を計画的に実施し、必要な情報を効率よく得ます。

限られた回数で因子を効率的に評価する

直交表実験:水準がバランスよく現れる表を使い、複数因子の効果を評価しやすくします。

直交表は、全組合せの一部を計画的に選ぶ際に使われる代表的な設計の一つです。本記事では初心者が違いを比較しやすいように、「全因子実験」「一部実施実験」「直交表実験」を分けて説明します。

実験計画法で押さえたい基本用語

因子

結果に影響すると考える要素です。製造業では、温度、圧力、加工時間、材料、設備条件などが因子にあたります。

水準

因子に設定する具体的な条件です。たとえば、温度を150℃と170℃に設定した場合、温度という因子には2水準があります。

因子 水準1 水準2 水準数
温度150℃170℃2

組合せ

複数の因子と水準から作る実験条件です。因子数や水準数が増えるほど、すべての組合せを調べるために必要な実験回数は増えます。たとえば、3因子・各3水準の場合は、3 × 3 × 3 = 27通りです。

因子数 各因子の水準数 実験回数 計算式
2242 × 2
3282 × 2 × 2
33273 × 3 × 3
43813 × 3 × 3 × 3

主効果と交互作用

主効果とは、ある因子の水準を変えたときに、結果がどのように変化するかを表す効果です。

交互作用とは、ある因子の効果が、別の因子の水準によって変わることです。たとえば、温度を上げた効果が材料Aでは大きい一方、材料Bでは小さい場合、温度と材料の間に交互作用があると考えます。

全因子実験とは?

全因子実験の組合せを示す図

全因子実験の考え方

全因子実験とは、設定した因子と水準のすべての組合せを実施する方法です。3つの因子A、因子B、因子Cにそれぞれ低・高の2水準を設定すると、組合せは2 × 2 × 2 = 8通りになります。

実験No. 因子A 因子B 因子C
1低低低
2低低高
3低高低
4低高高
5高低低
6高低高
7高高低
8高高高

全因子実験のメリット・デメリット

区分 内容
メリットすべての組合せを確認でき、主効果や交互作用の情報を詳しく得やすい
デメリット因子数や水準数が増えると、実験回数・コスト・時間が急増する

そのため、全因子実験は因子数が少なく、必要な実験回数を確保できる場合に向いています。

一部実施実験とは?

一部実施実験の考え方を示す図

なぜ一部だけ実施するのか

一部実施実験は、全因子実験で必要となる組合せの一部を計画的に選んで実施する考え方です。因子数が多く、すべての組合せを試すことが現実的でない場合に、実験回数を抑えながら必要な情報を得るために用います。

たとえば、2水準の因子が6個あると、全因子実験では26=64通りが必要です。一部実施実験では、目的に照らして重要な効果を評価できるように条件を選び、実施回数を減らします。

一部実施実験で注意したいこと

実験回数を減らすと、一部の効果を分けて評価できなくなる場合があります。そのため、「何を明らかにしたいか」「どの交互作用を評価したいか」を考えて計画することが大切です。

経験による条件の絞り込みとの違い

現場では経験や過去データをもとに条件を絞ることもあります。ただし、条件を経験的に選んだだけでは、因子の効果を体系的に評価できるとは限りません。

直交表実験とは?

直交表実験の考え方を示す図

直交表で実験回数を減らす考え方

直交表実験は、各因子の水準がバランスよく現れるように作られた表を使い、限られた実験回数で複数因子の効果を評価しやすくする方法です。

すべての組合せを実施する代わりに、一定の規則で選ばれた条件を実施します。ただし、評価したい因子や交互作用に応じて、適切な直交表と列の割付けを選ぶ必要があります。

全因子実験との違い

全因子実験はすべての組合せを調べるため情報を詳しく得やすい一方、直交表実験は一部の条件をバランスよく配置して実験回数を抑えます。直交表は便利ですが、常に全因子実験と同じ情報が得られるわけではありません。

直交表の具体的な使い方はこちら

直交表の種類やL8直交表を使った具体的な実験の組み方は、「超基本|直交表実験とは?限られた実験回数で複数因子を効率よく見る方法をやさしく解説」で詳しく解説しています。

全因子実験・一部実施実験・直交表実験の違い

3つの考え方を比較すると、次のように整理できます。

方法 考え方 実験回数 メリット 向いているケース
全因子実験すべての組合せを調べる多い情報を詳しく得やすい因子数が少なく、回数を確保できる場合
一部実施実験全組合せの一部を計画的に実施する少ない実験回数を減らせる因子数が多く、評価対象を絞れる場合
直交表実験水準をバランスよく配置した表を使う少ない複数因子を効率よく評価しやすい実験回数に制約があり、複数因子を扱う場合

一部実施実験や直交表実験では、実験回数を減らす代わりに、評価できる効果や解釈に制約が生じることがあります。「回数が少ないほど優れている」のではなく、目的に必要な情報を得られる計画を選ぶことが重要です。

どの実験計画を選べばよい?

実験計画を選ぶときは、最初に何を明らかにしたいかを確認します。そのうえで、次の点を整理します。

  • 実験の目的
  • 因子数
  • 各因子の水準数
  • 評価したい交互作用
  • 実施可能な実験回数
  • コストと時間

因子数と水準数が少なく、十分な実験回数を確保できる場合は、全因子実験が候補になります。すべての組合せを試すことが難しい場合は、一部実施実験や直交表実験を検討します。

実際に実験計画を試したい方へ

無料統計ソフト「Stat Lab Analytics(StatLA)」にはDOE機能があり、実験計画の作成からDOE結果の確認まで進められます。

Stat Lab AnalyticsでDOEを開く

まとめ

  1. 実験計画法は、目的に応じて実験条件を計画的に組む考え方です。
  2. 全因子実験は多くの情報を得やすい一方、因子数が増えると実験回数も増えます。
  3. 実験回数に制約がある場合は、全組合せの一部を計画的に実施する方法を検討します。
  4. 直交表実験は、限られた回数で複数因子を効率よく評価する代表的な方法の一つです。

直交表を使った具体的な実験の組み方は、直交表実験の解説記事で確認できます。

統計解析・実験計画のご相談

製造業・品質管理の実務に合わせた統計解析や実験計画のご相談を受け付けています。

サービス内容を確認する

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール