許容限界区間とは?|計算方法や品質管理での使い方をわかりやすく解説【Tolerance Interval】

はじめに

製造・品質管理・分析法評価などの現場では、将来得られる個々の測定値が規格内に収まる」を確認したい場面が少なくありません。

例えば、「この製造工程で作った製品の99%以上が規格内に入ると言えるか?」「今後測定されるデータの多くが許容範囲に収まるか?」
といったケースです。

このような場合、技術者の皆さんはどのように判断するでしょうか??
「100個測定して最小値と最大値を見る」や「95%信頼区間を計算する」といった方法を考えるかもしれません。

しかし、これらの方法では「将来得られる個々のデータがどの範囲に収まるか」を評価することはできません。

このような場面で使用される統計手法が、許容限界区間(Tolerance Interval)です。
許容限界区間を用いることで、「母集団に含まれる一定割合のデータが入る範囲」を、指定した信頼度のもとで推定することができます。

この記事では、

・許容限界区間とは何か
・信頼区間との違い
・許容限界区間の計算方法
・品質管理における具体的な使い方

について詳しく解説します。

▼この記事のポイント
・許容限界区間とは、母集団に含まれる一定割合のデータ範囲を信頼度付きで推定する方法

・信頼区間は「平均値の推定」、許容限界区間は「個々のデータのばらつき範囲」を推定する点が異なる

・製造業や品質保証では、将来生産される製品が規格内に収まるか判断する手法として活用される

許容限界区間とは?

1.許容限界区間の基本的な考え方

許容限界区間とは、

母集団に含まれる一定割合のデータが存在すると考えられる範囲を、信頼度付きで推定した区間

のことを指します。

例えば、信頼度95%で母集団の99%を含む許容限界区間の場合、「この計算した範囲内に、全体の少なくとも99%のデータが含まれると95%の信頼度で判断できる」という意味になります。

ここで重要なのは、

・何%のデータを含めたいか(含有率、coverage)
・どの程度の信頼性で判断するか(信頼度、confidence)

という2つの条件を技術者が設定することです。

例えば、「どの範囲に収まるか」については

・95%信頼度/99%許容限界区間
・95%信頼度/95%許容限界区間

のように目的に応じて設定します。品質保証では、より厳しい確認が必要な場合「95%信頼度で99%以上の製品が規格内に入ることを示す」といった使われ方をします。

2.許容限界区間と信頼区間の違い

許容限界区間とよく間違われるものに「信頼区間」があります。

しかし、この2つは評価している対象が異なります。

種類 知りたいこと 対象
信頼区間 平均値がどの範囲にあるか 母平均
許容限界区間 個々のデータが
どの範囲に入るか
母集団のばらつき

例えば製品重量を評価する場合、

・信頼区間:「平均重量が100g付近と言えるか」
・許容限界区間:「生産される製品の99%が規格内に入るか」

といった形でそれぞれ意味しているところが全く異なります(ここ要注意!)
品質管理では平均だけでなく、個々の製品が規格を満たす必要があるため、許容限界区間が重要になります。

許容限界区間の計算方法

正規分布を仮定した両側許容限界区間は、以下の式で計算できます。

許容限界区間の計算式
下側許容限界

XL = Xave − k × s
上側許容限界

XU = Xave + k × s

 ※Xave:サンプルから算出した平均値
 ※s:サンプルから算出した標準偏差
 ※k:許容係数(Tolerance factor)

ここで、kは「信頼度」と「サンプルサイズ」により決まる係数です。
サンプルサイズが小さいほどkは大きくなります。これは、「少ないデータでは母集団のばらつきを推定する不確かさが大きくなる」というところからきています。

参考:許容係数k表(信頼度95%)

サンプルサイズ n 許容係数 k
56.59
104.48
153.87
203.58
253.40
303.27
403.08
502.96
752.79
1002.70

※95%信頼度、99%含有率、両側正規許容限界区間の場合

※許容係数kや計算式についてはISO-16269-6などの規格表を参考にします

表を見ると、サンプルサイズが大きくなるほどkが小さくなり、許容限界区間が狭くなることが分かります。

許容限界区間の算出手順

許容限界区間は、単純に式へ当てはめればよいわけではありません。

正規許容限界区間では「データが正規分布していること」を前提としているため、以下の流れで評価します。

○STEP1:サンプルサイズを決める

評価目的に応じて必要なサンプル数を設定します。一般的にサンプルサイズが大きいほど、狭い許容限界区間を求めることができます

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○STEP2:データを取得する

対象工程や試験から代表性のあるデータを取得します。
この時、「測定者違い」や「Lot違い」とったノイズが入らないように注意します。
(標準偏差sの値が不必要に大きくなり、区間幅が広がることに繋がります)

○STEP3:データの正規性を確認する

取得データが正規分布に従っているか確認します。
代表的な方法として、

・歪度/尖度
・正規確率プロット
・正規性検定(Shapiro-Wilk検定)

などがあります。

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○STEP4:許容限界区間を計算する

正規性が確認できた場合、平均値・標準偏差・k値を用いて計算します。

・下側許容限界:XL=Xave − k×s
・上側許容限界:XU=Xave + k×s

○STEP5:結果を解釈する

算出された許容限界区間が、「設定した規格範囲内に収まるか」など、目的応じて結果を解釈します。

計算方法や結果の解釈について詳しく理解したい方は、以下の「事例」を確認ください↓

事例:工場製品の規格に収まる範囲の計算

品質保証担当のAさんは、担当工程の製品について、「99%以上の製品が規格内に収まっていること」を統計的に示す必要がありました。

すべての製品を測定する方法もありますが、Aさんの取り扱う製品は単価が高く、100個以上測定することは現実的ではありません。

そこでAさんは、工程から20個サンプリングし、95%信頼度で99%の製品が含まれる許容限界区間を求め、工程の妥当性を確認することにしました。

製品規格は以下とします。

項目 記号 規格値
上側規格値 USL 105.0 mm
下側規格値 LSL 95.0 mm

データを取得し、許容限界区間を計算するまでの過程を一緒に学んでいきましょう!


1.データの取得

工程から20個の製品を取得したところ、以下の結果となりました。

No. 測定値(mm)
199.8
2100.5
399.6
4100.2
5101.0
699.3
7100.8
8100.1
999.7
10100.4
11100.6
1299.5
13100.0
14100.3
1599.9
16100.7
1799.4
18100.2
19100.5
2099.8

このデータを使って必要は統計量を求めていきます。


2.許容限界区間の計算

許容限界区間の計算には、得られたデータから「平均」と「標準偏差」の統計量を得る必要があります。

まず、20個の測定データから平均値を求めます。

・平均値:Xave=100.15 mm

次に標準偏差を計算します。

・標準偏差:s=0.48 mm

今回は、

・サンプルサイズN:20
・信頼度:95%
・含有率:99%

で評価するため、許容係数表より、k=3.62を使用します。


許容限界区間は以下の式で計算します。

・下側許容限界:XL=Xave − k×s=100.15 −(3.62×0.48)= 98.41 mm
・上側許容限界:XU=Xave + k×s=100.15+(3.62×0.48)=101.89 mm

したがって、担当工程にて今後生産される製品の99%が含まれる範囲は

98.41 mm < X < 101.89 mm

であることがわかりました!

3.結果の解釈

今回の結果から、

「今後生産される製品の99%が98.41〜101.89 mmの範囲に入ることを、95%の信頼度で示せる」

ことが得られました。

製品規格は、
・LSL:95.0 mm
・USL:105.0 mm

のため、許容限界区間が規格範囲内に完全に収まっているため99%以上の製品が規格を満たす工程であると統計的に判断できます。無事に品質を保証することができました!

まとめ

許容限界区間とは、母集団の一定割合のデータが入る範囲を、信頼度付きで推定する統計手法です。

ポイントをまとめると、以下になります

✅平均値ではなく個々のデータのばらつきを評価する
✅品質管理や工程評価で使用される
✅「何%のデータを含めるか」と「信頼度」の設定が重要
✅サンプルサイズが小さいほど区間は広くなる
✅正規許容限界区間では正規性確認が必要

製造工程や分析評価では、「平均値が良い」だけでは品質を保証できません。

将来作られる製品が安定して規格を満たすことを示すために、許容限界区間は非常に有効な統計手法です。

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