データの対応あり・対応なしとは?|見分け方と検定手法の違いをわかりやすく解説

対応ありデータと対応なしデータの違いを示すイメージ

統計解析では、「対応のあるt検定」と「対応のないt検定」のように、データの対応関係によって使用する手法が変わります。対応関係を正しく判断できないと、データに合わない検定を選んでしまう可能性があります。

この記事では、対応あり・対応なしの違いと見分け方を、臨床試験や製造業の事例を使ってわかりやすく解説します。

▼この記事のポイント

・対応あり:比較するデータ同士を意味のある形で1対1に対応付けられるデータ

・対応なし:異なる対象を比較し、データ同士に1対1の対応関係がないデータ

・見極め方:比較するデータ同士を1対1で対応付けられるかを確認する

・検定手法:対応あり/対応なしによって選択する統計検定が変わる

データの対応あり・対応なしとは?

対応ありデータと対応なしデータの基本的な違い

対応あり・対応なしを見分ける基本は、比較するデータ同士を意味のある形で1対1に対応付けられるかです。

・対応あり:同じ対象を時点や条件を変えて測定した場合や、条件に基づいてマッチングしたペアなど、測定値同士に対応関係があるデータです。

・対応なし:異なる対象から得られた2つのグループなど、測定値同士に1対1の対応関係がないデータです。

英語では、対応ありをpaired data、対応なしをunpaired dataと呼びます。

データの対応があるケース

同じ対象を繰り返し測定する対応ありデータのイメージ

対応ありデータでは、同じ対象を複数の時点や条件で測定するなど、各測定値を1対1で対応付けられます。代表的な2つの事例を確認します。

製薬の臨床試験

新薬の効果を確認するため、同じ被験者にプラセボ薬と新薬を投与し、投与後の血圧を比較する例を考えます。

被験者プラセボ薬投与後の血圧新薬投与後の血圧
A148138
B155144
C142133
D160149
E150141

被験者Aのプラセボ薬の結果と新薬の結果のように、同じ被験者の測定値同士を対応付けられるため、対応ありデータです。血圧の平均値を比較する場合は、対応のあるt検定などを使用します。

対応のある検定では、被験者ごとの差ではなく、各被験者における条件間の変化を評価できます。

改善前後の不良率比較

品質管理では、同じ製造ラインについて設備改善前後の不良率を比較することがあります。

製造ライン改善前の不良率(%)改善後の不良率(%)
ラインA4.82.9
ラインB5.23.4
ラインC4.52.8
ラインD5.73.6
ラインE4.93.0

ラインAの改善前と改善後のように、同じラインの測定値同士に対応関係があるため、対応ありデータです。ラインごとの不良率を数値として比較する場合は、データの前提に応じて対応のあるt検定やWilcoxon符号付順位検定を検討します。

データの対応がないケース

対応なしデータは、異なる対象から得られた独立したグループを比較するデータです。表の行数や名称が同じでも、測定値同士に意味のある対応関係がなければ「対応なし」と判断します。

男女の身長比較

男女という異なるグループを比較する対応なしデータのイメージ

20代の男性と女性について、身長を比較する例を考えます。

男性身長(cm)女性身長(cm)
男性A172女性A158
男性B175女性B162
男性C168女性C155
男性D181女性D160
男性E177女性E164
男性F170女性F157
男性G174女性G161
男性H179女性H159

男性Aと女性Aの間に特別な対応関係はなく、それぞれ異なる対象です。そのため、男性グループと女性グループは対応なしデータとして扱います。

新人とベテランの作業時間比較

製造現場で、新人作業者とベテラン作業者の作業時間を比較する例です。

新人作業者作業時間(分)ベテラン作業者作業時間(分)
新人A28ベテランA18
新人B31ベテランB17
新人C26ベテランC19
新人D29ベテランD16
新人E27ベテランE18

新人AとベテランAは別の作業者であり、記号が同じというだけでは対応関係になりません。両グループの測定値を1対1で対応付ける根拠がないため、対応なしデータです。

対応あり・対応なしを見極めるコツ

判断するときは、「比較するデータ同士を、意味のある根拠に基づいて1対1で対応付けられるか」を確認します。同じ対象を時点や条件を変えて測定していれば、代表的な対応ありデータです。

一方、2つのグループに同じ人数がいても、それだけでは対応ありとはいえません。サンプル数が同じかではなく、各測定値の間に対応関係があるかが判断基準です。

POINT
表の同じ行に並んでいる、またはサンプル数が同じという理由だけで対応ありとは判断できません。研究計画やデータの取得方法まで確認しましょう。

対応あり・対応なしで使う検定は変わる

対応ありと対応なしで選択する検定手法の違い

対応あり・対応なしによって、選択する統計検定は変わります。対応関係を考慮しない手法を選ぶと、差を適切に捉えられない可能性があります。

代表的な検定手法をまとめると、次のようになります。

目的対応なし対応あり
2群の平均値比較対応のないt検定対応のあるt検定
2群の位置の比較
(ノンパラメトリック)
Mann-Whitney U検定Wilcoxon符号付順位検定
2群の比率比較χ²検定
(カイ二乗検定)
McNemar検定
(マクネマー検定)
3群以上の平均値比較一元配置分散分析反復測定分散分析

実際の手法選択では、対応関係に加えて、目的変数の種類、分布、群数、研究デザインなども確認します。

まとめ

・対応あり:比較するデータ同士を意味のある形で1対1に対応付けられるデータです。

・対応なし:異なる対象を比較し、測定値同士に1対1の対応関係がないデータです。

・判断基準:サンプル数ではなく、データの取得方法に基づいて対応付けられるかを確認します。

・検定の選択:対応関係によって使用する統計検定が変わります。

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