交絡とは?統計解析で間違った結論を導く原因を事例でわかりやすく解説

はじめに

統計解析を行うと、『交絡』という用語を聞くことがあります。

・「その因子、交絡しているよ」
・「交絡を防ぐために、実験計画法を使おう」

このような会話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか?では、この『交絡』とは一体何でしょうか?
統計解析を実施する上で、因子の交絡は切っても切り離せない重要な概念です。
しかし、多くの技術者は交絡の存在や意味を正しく理解しないまま、取得したデータを解析してしまっています

その結果、「統計的には有意差があるのに、実際には効果がなかった」「改善したはずなのに再現性がない」といった問題が発生します。
この記事では、統計解析で重要となる「交絡とは何か?」について、具体的な事例や図表を使いながら視覚的にわかりやすく解説していきます!

▼この記事のポイント
交絡とは、複数の因子の影響を切り分けられない状態のこと
✔ 統計解析では、交絡によって本当は影響しない因子を重要と判断してしまうことがある
✔ 回帰分析・相関分析では、因子同士の相関(交絡)に注意する必要がある
✔ 交絡を防ぐには、実験計画法や適切なデータ取得計画が重要

統計解析をするうえで起こる交絡の問題

交絡は、主に以下のような統計手法を使用する際に問題となります。

統計手法 交絡によって起こる問題
回帰分析
(重回帰分析)
説明変数同士が関連していると、それぞれの因子が目的変数へ与える影響を正しく評価できない
ロジスティック
回帰分析
本当は影響しない因子でも、結果(発生率・合否など)に影響すると誤って判断する可能性がある
相関分析 2つのデータに相関が見えても、別の因子が影響している可能性があり因果関係を判断できない
分散分析
※実験計画法なし
比較したい因子以外の条件差が混ざり、平均値の差が何による影響なのか判断できない

なぜなら、これらの統計解析で扱うデータは、事前に条件を計画して取得したデータではなく、「取得できたなりのデータを後から解析する」というケースが多いためです。

例えば、製造工程において以下のようなデータを取得したとします。
目的は、「製品強度を高める因子を見つけること」です。

取得できたデータは以下の通りでした。

No. 作業者の経験年数
(年)
製品強度
(MPa)
1 1 52
2 2 55
3 3 59
4 5 64
5 6 69
6 8 75

横軸を作業者の経験年数、縦軸を製品強度として散布図を描くと以下のようになります。

また、相関係数を計算すると R=0.90 となりました。

この結果を見ると、「作業者の経験年数と製品強度には強い関係がある」「つまり経験豊富な作業者ほど、高強度の製品を作れる」と判断したくなります。
そのため、作業者の経験年数を増やせば、製品強度を高く保てるという結論を出しました。

……。

あれ、本当に大丈夫でしょうか?ここで注意が必要です!

隠れた因子によって判断を間違える

実は今回のデータについて、もう1つ重要な情報が取得できていました。
それが、加工温度です。改めて表にすると以下のようになりました。

No. 作業者の経験年数
(年)
加工温度
(℃)
製品強度
(MPa)
1 1 150 52
2 2 155 55
3 3 160 59
4 5 170 64
5 6 180 69
6 8 190 75

実は経験年数が高い作業者ほど、高い加工温度条件を担当していました。
つまり「経験年数」と「加工温度」が一緒に変化してしまっています

そして、

・作業者の経験年数と製品強度
・加工温度と製品強度

それぞれの散布図を確認すると以下のようになります。

この結果を見ると、加工温度も製品強度と強い関係がありそうです。

つまり、

・作業者の経験年数が製品強度を上げているのか?
・加工温度が製品強度を上げているのか?

このデータだけでは判断できません。もしかすると両方影響しているかもしれません。
あるいは、本当は加工温度だけが影響していて、作業者の経験年数は関係ない可能性もあります。

では、なぜ影響を切り分けることができないのでしょうか?理由は、作業者の経験年数と加工温度の水準が連動してしまっているためです。

具体的には、

作業者の経験年数 担当している加工条件
少ない
(新人作業者)
加工温度が低い条件を担当
多い
(ベテラン作業者)
加工温度が高い条件を担当

という状態です。

つまり、「作業者の経験年数」と「加工温度」という2つの因子が一緒に変化しています。
このような状態を、「因子間に相関がある」と言います。

そして、因子間に相関があることで、それぞれの影響を切り分けられなくなる現象交絡と呼びます。

交絡があると統計解析では何が問題になる?

交絡が存在すると、どんなに高度な統計解析手法を使用しても、各因子の影響を正しく分離することはできません

例えば今回の場合、本当は加工温度が製品強度に影響しているだけなのに、「作業者の経験年数が重要だ!」と間違った判断をしてしまう可能性があります。
交絡がある状態では、技術者にとって以下のような問題が発生します。

!:本当は影響しない因子を「影響する」と判断してしまう
!:本当に重要な因子を見逃してしまう
!:効果のない改善活動に時間やコストを使ってしまう

せっかくデータを用いて客観的に判断したはずなのに、誤った結論を導いてしまうわけです。
これが、統計解析において交絡を理解する必要がある理由です。

交絡を避けるためにはどうしたらよい?

交絡によって、本当は影響していない因子を重要と判断してしまう危険性について理解できたと思います。
では、統計解析において交絡を防ぐためには、どのような対策をすればよいのでしょうか?ここからは、交絡による誤った判断を避けるための代表的な方法について紹介していきます。

① 実験計画法を使う

最も有効な方法が、実験計画法(DOE:Design of Experiments)を使用することです。
実験計画法では、解析したい因子の水準を意図的に変化させます。

例えば今回の場合、実験計画法を用いて

条件 作業者の経験年数 加工温度
少ない 低い
少ない 高い
多い 低い
多い 高い

というように、全ての組み合わせでデータを取得します。すると、経験年数と加工温度の影響を別々に評価することができます。
つまり実験計画法とは、因子同士が交絡しないように、あらかじめデータ取得方法を設計する手法とも言えます。

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② データ取得時に因子間の関係を確認する

すでに取得済みのデータを解析する場合は、説明変数同士の関係を確認することが重要です。

例えば、以下のような確認を行うことが有効です。
・散布図を確認し、因子同士が同じ傾向で変化していないか確認する
・相関係数を確認し、因子間に強い相関がないか確認する
・多重共線性(VIF)を確認し、各因子の影響を正しく評価できる状態か確認する

特に重回帰分析では、説明変数同士が強く相関している場合、それぞれの因子が目的変数に与える影響度を正しく評価できない可能性があります。
そのため、統計解析を行う前に、「因子同士が似た動きをしていないか?」「本当に各因子の影響を切り分けられるデータになっているか?」を確認することが重要です。

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最後に

この記事では、統計解析における交絡について解説しました。

ポイントをまとめると以下になります。

・交絡とは、複数の因子の影響を切り分けられない状態のこと
・交絡が発生する原因は、因子同士が連動して変化してしまうこと
・交絡があると、本当は影響しない因子を重要な因子だと誤って判断してしまう可能性がある
・交絡を防ぐためには、実験計画法などを活用して、事前にデータ取得方法を設計することが重要

統計解析では、計算方法や有意差だけに注目してしまいがちです。
しかし、どれだけ高度な解析手法を使用しても、元データに交絡が存在すると正しい判断はできません。
「解析する前に、そもそも因子を正しく比較できるデータになっているか?」この視点を持つことが、データ解析を成功させる重要なポイントです。

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