χ二乗検定(独立性の検定)とは?|クロス集計表を使った比率の差の検定を分かりやすく解説

はじめに

・「設備Aと設備Bで不良率は違うのか?」
・「薬Aと薬Bで改善率に差があるのか?」

製造業や医療統計の現場では、このような比較を行う場面がよくあります。

例えば、品質管理部門で設備別の不良発生状況を調査したところ、以下のような結果になりました。

設備 良品 不良品
設備A 95 5
設備B 85 15

設備Aでは100個中5個が不良。一方、設備Bでは100個中15個が不良でした。

この結果を見ると、「設備Bの方が不良が多そう」と感じるかもしれません。
しかし、この差は本当に設備による違いなのでしょうか?もしかすると、偶然データを取ったタイミングで設備Bの不良が多かっただけかもしれません。

このようなとき、「設備の違い」と「不良発生」に統計的な関係があるかを判断する方法が、χ二乗検定(独立性の検定)です。
この検定は製造業の分野では必須といってよい程使います。

本記事では、χ二乗検定(独立性の検定)について、基本的な考え方から計算方法、結果の解釈まで分かりやすく解説します。

▼この記事のポイント
・χ二乗検定(独立性の検定)は、2つのカテゴリ間に関係性があるかを調べる検定
・設備種類と不良発生、薬の種類と治療効果などのクロス集計表に使用できる
・観測度数と期待度数のズレからχ²値を計算し、p値によって有意差を判断する
・一様性の検定との違いは「2つのカテゴリの関連性を見る」点
・品質管理、医療統計、マーケティングなど幅広い分野で活用される

χ二乗検定(独立性の検定)とは?

χ二乗検定(独立性の検定)とは、2つのカテゴリ変数に関連性があるかを確認する統計手法です。

もう少しかみ砕くと、「ある分類の違いによって、結果の割合が変化するのか?」とも言えます。ここでいう「分野」が、ライン/作業者/サプライヤー/工法・・・などに分類される条件の違いのことを指します。

もう少し具体例を挙げると、以下の事例において統計的に判断する際に使用されます。
業界問わず、判断に根拠を付ける際は必須の統計手法といえます。

分野 目的
製造業 設備の種類と不良発生に関係があるかを調べる
医療・製薬 薬の種類と治療効果に関係があるかを調べる
マーケティング 性別とアンケート回答に関係があるかを調べる

一様性の検定との違い

同じχ二乗検定でも、一様性の検定と独立性の検定では目的が異なります。
ここは間違いやすいポイントなので、ぜひ押さえておきたいです。

一様性の検定は、「1つのカテゴリ内で割合に偏りがあるか」を確認します。

例えば、
・曜日ごとの来客数に差があるか
・サイコロの出目に偏りがあるか

などが挙げられます。

一方、本記事で取り扱う独立性の検定では、「2つのカテゴリに関係性があるか」を確認します。ここが決定的な違いです。

独立性の検定の場合は
・設備種類 × 良品/不良品
・薬種類 × 改善あり/なし

のようなクロス集計表を必ず扱います。

種類 目的 使用例
一様性の検定 1つのカテゴリ内で割合に偏りがあるか確認する 曜日ごとの来客数に差があるか確認する
独立性の検定 2つのカテゴリ間に関係性があるか確認する 設備種類と不良発生に関係があるか確認する

χ二乗検定(独立性の検定)の定義および計算方法

以降は、定義や数理的な面にも触れながら独立性の検定の計算方法について解説します。

①仮説の設定

χ二乗検定では、最初に帰無仮説と対立仮説を設定します。
今回の設備と不良率の例では以下になります。

・帰無仮説(H0):設備種類と不良発生には関係がない (設備A不良率=設備B不良率)
・対立仮説(H1):設備種類と不良発生には関係がある (設備A不良率≠設備B不良率)

つまりχ二乗検定(独立性の検定)では、
「観測された不良率の違いが偶然の範囲なのか、それとも設備による影響なのか」
を統計的に判断します。


②検定統計量(χ二乗値)の計算

独立性の検定でも、一様性の検定と同じく以下の式を使用します。

χ² = Σ ( (O − E)² / E )

・O:観測度数(実際のデータ)
・E:期待度数(関連性がない場合に期待される値)

ポイントは数式の(O-E)²の部分で、これは実際の結果と、関係がないと仮定した場合の結果(期待値)がどれくらいズレているかを数値化している点です。

独立性の検定では期待度数Eを以下の式で求めます。

期待度数 = 行合計 × 列合計 全体数

この期待度数との差が大きいほどχ²値は大きくなります。


③p値の算出と判断

計算したχ²値をχ二乗分布に当てはめ、p値を求めます(やり方は次項の事例にて)。

一般的には、
・p < 0.05:統計的に有意差あり
・p < 0.01:より強い根拠で有意差あり

と判断します。
ここまでがχ二乗検定(独立性の検定)の定義および計算方法です!
事項では事例を交えて、具体的な数字を使いながらより詳しく解説します。
実際に計算しながら感触を掴みましょう。


事例:設備間の不良率比較

ここから実際に計算してみます。ある工場で設備Aと設備Bの生産結果を比較しました。
結果は以下です。

設備 良品 不良品
設備A 95 5
設備B 85 15

設備Bの方が不良数が多く見えます。しかし、「偶然なのか」「本当に設備による違いなのか」は、この表だけでは判断できません。
同様の試行をもう一度行った場合、設備A・Bで不良率が逆転するなどの可能性が考えられるからです。

そこでχ二乗検定(独立性の検定)を実施します。
これにより、統計的にも有意に設備間で不良の発生率が異なる(≒設備Bが不良率が高い)と根拠づけることができるわけです。
具体的な計算は、以下①~④に従って実施します。

① 合計値を計算する

まず、行合計・列合計を計算します。

設備 良品 不良品 行合計
設備A 95 5 100
設備B 85 15 100
列合計 180 20 200

② 期待度数を計算する

次に期待度数を計算します。

期待度数とは、帰無仮説が正しいと仮定した場合に期待される値です。

今回の帰無仮説は、

設備種類と不良発生には関係がない(設備Aと設備Bの不良率は同じ)

というものです。

つまり、設備による違いがないのであれば、良品・不良品の割合は設備Aと設備Bで同じになるはずです。この「本来期待される数」を以下の式で求めます。

期待度数 = 行合計 × 列合計 全体数

まず、設備Aの良品数について計算します。

・設備Aの行合計:100個
・良品の列合計:180個
・全体数:200個

なので、

期待度数 = 100 × 180 200

= 90

となります。つまり設備と不良発生に関係がなければ、設備Aでは良品が90個程度になるはずという意味になります。

同様に設備Aの不良品について計算すると、

期待度数 = 100 × 20 200

= 10

となります。

設備Bについても同じように計算します。

・設備B 良品:

期待度数 = 100 × 180 200

= 90

・設備B 不良品:

期待度数 = 100 × 20 200

= 10

となります。

以上の期待度数を表にまとめると以下になります。これで下準備は完了です!

設備 良品 不良品
設備A 90 10
設備B 90 10

③ χ²値を計算する

観測度数と期待度数から、χ二乗検定の検定統計量を計算します。

χ² = Σ (O − E)² E

・O:観測度数(実際のデータ)
・E:期待度数(関連性がない場合に期待される値)

この式では、実際の結果(観測度数)と、関係がないと仮定した結果(期待度数)のズレを計算しています。

今回の事例では、

・設備A 良品
・設備A 不良品
・設備B 良品
・設備B 不良品

の4つについて計算します。

まず設備A 良品について計算します。
・観測度数:95
・期待度数:90

なので、(9590)290=0.278\frac{(95-90)^2}{90} = 0.278となります。


次に設備A 不良品です。

・観測度数:5
・期待度数:10

なので、(510)210=2.5\frac{(5-10)^2}{10} = 2.5となります。


設備B 良品についても同様に計算します。

・観測度数:85
・期待度数:90

なので、(8590)290=0.278\frac{(85-90)^2}{90} = 0.278となります。


最後に設備B 不良品です。

・観測度数:15
・期待度数:10

なので、(1510)210=2.5\frac{(15-10)^2}{10} = 2.5となります。


計算結果をすべてまとめると以下のようになります、

項目 観測度数(O) 期待度数(E) (O-E)²/E
設備A 良品 95 90 0.278
設備A 不良品 5 10 2.500
設備B 良品 85 90 0.278
設備B 不良品 15 10 2.500

最後に4つの値を足し合わせます。

χ2=0.278+2.500+0.278+2.500χ^2 = 0.278+2.500+0.278+2.500χ2=5.56χ^2=5.56

となります。

つまり今回のデータでは、観測された結果と「設備と不良発生に関係がない場合の結果」のズレの大きさは χ²値=5.56 と数値化されました。次のステップでは、このχ²値をχ二乗分布に当てはめ、p値を求めて「統計的に有意な差なのか」を判断します。


④ p値を求める

最後に、計算したχ²値からp値を求めます。
前項で計算した結果、「χ²値:5.56」となりました。

しかしχ²値だけでは、統計的に意味のある差なのか判断することはできません。
そこで、求めたχ²値をχ二乗分布に当てはめて、p値を計算します。

その際に必要になるのが「自由度」です。自由度は以下の式で求めます。

自由度=(行数1)×(列数1)自由度=(行数-1)×(列数-1)今回のクロス集計表では、

・行数:2(設備A、設備B)
・列数:2(良品、不良品)

なので、自由度=(21)×(21)自由度=(2-1)×(2-1)=1=1となります。

つまり今回は、

・χ²値:5.56
・自由度:1

をχ二乗分布に当てはめてp値を計算します。Excel関数で簡単に求めることができます。

=CHISQ.DIST.RT(5.56,1)

計算すると、p=0.018p=0.018となります。

一般的に統計解析では以下を判断基準にします。

・p < 0.05 :統計的に有意差あり
・p < 0.01 :より強い根拠を持って有意差あり

今回得られた結果は、p=0.018<0.05p=0.018 < 0.05

であるため、帰無仮説(設備種類と不良発生には関係がない)を棄却します。
つまり、設備種類と不良発生には統計的に有意な関係があると判断できます。
今回の例では、設備Bの方が不良率が高くなっており、この差は単なる偶然ではなく、設備による影響が存在する可能性があると考えられます。

χ二乗検定(独立性の検定)を使用する際の注意点

χ二乗検定は便利ですが、使用条件があります。

①データはカテゴリカルデータであること

独立性の検定は、

・良品/不良品
・改善あり/なし
・合格/不合格

のような分類データに使用します。寸法や重量などの連続値データには使用できません。

②各データが独立していること

同じ対象を前後比較したデータには注意が必要です。
例えば、改善前後で同じ設備を比較する場合は対応関係があります。

その場合は、マクネマー検定などを検討します。

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③期待度数が小さすぎないこと

χ二乗検定では、期待度数が小さい場合、近似精度が低下します。
一般的には、期待度数5未満のセルが多い場合は注意が必要です。

その場合は、Fisherの正確確率検定を使用することがあります。

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まとめ

χ二乗検定(独立性の検定)は、2つのカテゴリ変数の関係性を調べる統計手法です。

重要ポイントを整理すると、

・クロス集計表の解析に使用する
・2つのカテゴリに関連性があるか判断できる
・観測度数と期待度数のズレからχ²値を計算する
・χ²値からp値を求め、有意差を判断する
・品質管理、医療統計、マーケティングなど幅広く活用される

となります。製造業での不良率比較や、医療分野での治療効果比較など、実務でも頻繁に使用される重要な検定手法です。

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