
設備や製品を長く安定して使うためには、「どの程度故障するのか」「故障まで、または次の故障までどのくらい使えるのか」を数値で捉える必要があります。
本記事では、製造業でよく使われる故障率、MTBF、MTTFについて、考え方、数式、具体例、実務での使い分けの順に解説します。
信頼性工学そのものの考え方から確認したい方はこちらをご覧ください。
・故障率 λ は、単位時間あたりの故障発生の程度を表します。
・MTBFは、修理可能な設備の平均故障間隔を表します。
・MTTFは、非修理系アイテムの平均故障時間を表します。
・MTBFとMTTFは似ていますが、対象とする設備・製品が異なります。
・MTBF=1/λは、故障率一定などの条件を満たす場合に成り立つ関係です。
信頼性の代表的な指標

故障率、MTBF、MTTFはいずれも信頼性を表す指標ですが、見ている対象と時間の捉え方が異なります。
故障率・MTBF・MTTFの違い
| 指標 | 主な対象 | 表すもの | 代表的な単位 |
|---|---|---|---|
| 故障率 λ | 設備・製品 | 単位時間あたりの故障発生の程度 | 件/時間、1/時間 |
| MTBF | 修理可能な設備 | 故障と故障の平均間隔 | 時間 |
| MTTF | 非修理系製品 | 使用開始から故障までの平均時間 | 時間 |
故障率は「故障の発生頻度」、MTBFは「修理して再使用する設備の故障間隔」、MTTFは「修理せず交換する製品の故障までの時間」に着目します。
故障率とは?

故障率は、単位時間あたりにどの程度故障が発生するかを表す指標です。単純な百分率ではなく、通常は「件/時間」や「1/時間」のように時間の逆数を含む単位で表します。
故障率の計算式
・λ:故障率
・k:観測期間中の故障件数
・T:総稼働時間
例えば λ=0.002/時間であれば、長期的には1時間あたり0.002件程度の故障発生頻度に相当します。
例題:設備Aの故障率
設備保全担当者が、設備Aの故障頻度を定量化するため、半年間の総稼働時間と故障件数を集計しました。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 総稼働時間 T | 2,000時間 |
| 故障件数 k | 4件 |
この結果は、観測期間における故障発生頻度が1時間あたり0.002件だったことを示します。故障率が一定で指数分布を仮定できる場合には、1/0.002=500時間となるため、平均的には約500時間に1回の故障に対応します。ただし、必ず500時間ごとに故障するという意味ではありません。
Excelでは、故障件数と総稼働時間をセルに入力し、=故障件数セル/総稼働時間セルで計算できます。
MTBFとは?

MTBFはMean Time Between Failuresの略で、日本語では平均故障間隔と呼びます。ポンプ、コンプレッサー、生産設備など、故障後に修理して再び使用する設備を対象に、故障と次の故障の間隔を表します。
MTBFの計算式
同じ種類・同じ使用条件の設備を比較する場合、MTBFが大きいほど平均的な故障間隔が長いと解釈できます。使用環境や負荷、保全条件が異なる設備を、MTBFの値だけで単純比較しないことが重要です。
故障率との関係
MTBFと故障率 λ は常に逆数になるわけではありません。故障率が時間によらず一定で、指数分布または修理可能系の一定故障率モデルを仮定できる場合に、次の関係が成り立ちます。
例題:設備BのMTBF
設備Bの故障間隔を把握するため、修理後から次の故障までの時間を6回記録しました。
| 回数 | 修理後から故障までの時間 |
|---|---|
| 1回目 | 345時間 |
| 2回目 | 500時間 |
| 3回目 | 672時間 |
| 4回目 | 430時間 |
| 5回目 | 401時間 |
| 6回目 | 398時間 |
設備Bの故障間隔は、長期的な平均として約458時間です。個々の故障間隔は345~672時間とばらついており、「必ず458時間で故障する」という意味ではありません。
Excelでは=総稼働時間セル/故障件数セル、または今回のように故障間隔がすべて得られている場合は=AVERAGE(故障間隔範囲)で確認できます。
MTTFとは?

MTTFはMean Time To Failureの略で、日本語では平均故障時間と呼びます。LED、電池、ヒューズ、一部の電子部品など、一般に故障後は修理せず交換する非修理系アイテムの故障までの平均時間です。
MTTFの計算式
すべてのサンプルが故障するまで観測された完全データでは、各製品の故障時間の単純平均として計算できます。
例題:LEDランプのMTTF
ある時期に製造したLEDランプの寿命を確認するため、15個を故障まで観測しました。故障時間は次のとおりです。
| 部品No. | 故障時間 | 部品No. | 故障時間 | 部品No. | 故障時間 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 24,000 | 6 | 21,950 | 11 | 24,360 |
| 2 | 27,459 | 7 | 24,510 | 12 | 23,890 |
| 3 | 22,850 | 8 | 23,240 | 13 | 24,980 |
| 4 | 25,120 | 9 | 25,780 | 14 | 22,670 |
| 5 | 23,680 | 10 | 22,100 | 15 | 24,140 |
このデータのMTTFは約24,049時間です。従来の平均30,000時間と比べると短い結果ですが、原因を判断するには製造条件、使用条件、サンプルの選び方、寿命分布なども確認する必要があります。
Excelでは=AVERAGE(故障時間範囲)で計算できます。
打切りデータに注意
寿命試験では、試験終了時点まで故障していない製品を打切りデータとして扱うことがあります。この場合、故障した製品だけの単純平均では寿命を適切に推定できません。
打切りを含むデータや、時間とともに変化する故障率を評価する場合は、ワイブル分析や生存時間解析などを用います。また、MTTFだけでは寿命分布の形や短寿命品の割合を十分に表せない場合があります。
MTBFとMTTFの違い
| 指標 | MTBF | MTTF |
|---|---|---|
| 日本語 | 平均故障間隔 | 平均故障時間 |
| 主な対象 | 修理可能な設備 | 非修理系製品 |
| 例 | ポンプ、コンプレッサー | LED、電池、ヒューズ |
| 意味 | 故障と故障の平均間隔 | 使用開始から故障までの平均時間 |
同じ「時間」の指標でも、修理して再使用するか、故障後に交換するかで使い分けます。
3つの指標を実務でどう使い分ける?
✅故障の発生頻度を設備間や期間間で比較したい場合:故障率 λ
✅修理可能設備の保全計画や稼働実績を評価したい場合:MTBF
✅交換を前提とする製品の寿命試験を要約したい場合:MTTF
いずれも平均的な指標であり、単一の値だけで信頼性をすべて説明することはできません。比較するときは対象、使用条件、観測期間、保全条件、打切りの有無をそろえてください。
さらに詳しく評価するならワイブル分析
故障率は時間とともに一定とは限りません。初期故障、偶発故障、摩耗故障という時間変化を表した考え方がバスタブ曲線です。
故障率が時間とともに変化する場合や、寿命分布を詳しく評価したい場合は、ワイブル分析を利用します。ワイブル分布では形状パラメータを通じて故障率の増減を捉えられ、打切りデータも含めて解析できます。
まとめ
故障率、MTBF、MTTFは、いずれも設備や製品の信頼性を時間の観点から捉える指標ですが、それぞれが表す内容は異なります。故障率 λは単位時間あたりにどの程度故障が発生するかを示し、設備間や期間間で故障の発生頻度を比較するときに役立ちます。
MTBFは、修理して繰り返し使用する設備について、故障から次の故障までの平均間隔を表します。一方、MTTFは、LEDや電子部品など、故障後に修理せず交換する非修理系製品について、使用開始から故障までの平均時間を表します。同じ「時間」の指標でも、修理可能な設備にはMTBF、非修理系製品にはMTTFというように、対象に応じて使い分けることが重要です。
故障率が時間によらず一定で、指数分布を仮定できる場合には、MTBFと故障率はMTBF=1/λの関係になります。ただし、この関係はすべての故障データに常に成り立つものではありません。また、MTBFやMTTFは長期的な平均であり、個々の設備や製品が必ずその時間で故障することを意味しません。
実務では、指標の値だけで結論を出さず、対象の種類、使用条件、保全条件、観測期間、打切りデータの有無も合わせて確認します。初期故障・偶発故障・摩耗故障のような時間による故障率の変化や、寿命分布全体を詳しく評価したい場合は、ワイブル分析などを組み合わせることで、より実態に即した信頼性評価ができます。
信頼性解析ガイド
故障時間データを、 次の信頼性評価へ つなげよう。
故障率・MTBF・MTTFを整理したら、
寿命分布と故障率の時間変化を確認します。
