GRRがNGだったときの対処法

はじめに

Gage R&Rを実施した結果、GRR%%公差が30%を超えてしまった
というのは実務では非常によくあるケースです。

このとき重要なのは、「NGだった」という事実そのものではなく、
“なぜNGになったのか”を正しく分解して捉えることです。

GRRは単なる評価指標ではなく、測定システムの問題点を明らかにするツールです。
本記事では、GRRがNGになったときに、どのように原因を切り分け、どのように改善すべきかを実務目線で解説します。

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GRRがNGとは何が起きているのか?

GRRが高いということは、測定値のばらつきの中で
測定システムが占める割合が大きい状態です。

つまり、同じものを測っているにも関わらず、結果が安定しない状態であり、
このままでは以下のような問題が発生します。

リスク 内容
工程能力(Cp / Cpk)の評価が歪む 測定誤差により、実際の工程能力を正しく評価できない
合否判定が測定者やタイミングで変わる 測定のばらつきにより、判定の一貫性が失われる
改善活動の方向性を誤る 誤ったデータに基づき、不適切な改善を実施してしまう
不良が流出し、顧客で問題になる 検出できなかった不良が市場に出てクレームにつながる

👉 測定が不安定なままでは、どれだけ高度な分析をしても意味を持ちません。

原因の切り分け(ここが最重要)

GRRがNGになったときは、必ず分散の内訳を確認します。
ポイントは、「どの要素がばらつきを支配しているか」です。

主に見るべきは以下の3パターンです。

  • 繰り返し性(Repeatability)が大きい
  • 再現性(Reproducibility)が大きい
  • 両方が大きい

この切り分けにより、改善の方向性が大きく変わります。

④ 原因別の対策

■ 繰り返し性が悪い場合(測定器起因)

同じ人が同じ条件で測定しているにも関わらずばらつく場合、原因は主に測定器や測定方法にあります。
例えば、測定器の分解能が不足している場合や、ワークの固定方法が安定していない場合、測定圧が一定でない場合などが該当します。

この場合は、測定システムそのものを見直すことが重要です。

改善項目 内容
測定器の見直し 分解能・精度を確認し、適切な測定器を選定する
治具の導入・固定方法の標準化 測定位置や姿勢を統一し、ばらつきを低減する
測定手順の統一 作業者間の差をなくすため、手順を明確にルール化する

「誰が測っても同じ結果になる状態」を作ることがゴールです。

■ 再現性が悪い場合(測定者起因)

測定者によって結果が変わる場合は、人の影響が大きい状態です。
同じ測定器を使っていても、当て方や読み取り方、判断基準の違いによって結果が変わることがあります。特に初心者と熟練者の差が大きい場合に顕著です。

この場合は、人に依存しない仕組みづくりが必要になります。

改善項目 内容
作業標準書の整備 測定方法や手順を文書化し、誰でも同じ作業ができるようにする
測定教育の実施 作業者に対して測定方法や注意点を教育し、ばらつきを低減する
測定条件の明確化 測定時の力・位置・順序などを統一し、測定の再現性を向上させる

👉 「誰が測っても同じやり方になる状態」を目指します。

■ 両方が悪い場合

繰り返し性と再現性の両方が大きい場合は、測定システム全体に問題があります。
測定器・人・方法・環境のすべてが影響している可能性があるため、個別対応ではなく、測定プロセス全体を見直す必要があります。

👉 一度ゼロベースで測定の設計を見直すことが有効です。

それでも改善できない場合:ガードバンド(GB)の考え方

現場によっては、どうしてもGRRを十分に下げられないケースもあります。
例えば、非接触測定や柔らかい材料など、物理的にばらつきが大きくなりやすい場合です。

このような場合に有効なのが、ガードバンド(Guard Band)の考え方です。

ガードバンドとは、規格値の内側に安全マージンを設け、測定誤差による誤判定を防ぐ手法です。つまり、測定の不確かさを前提にして、判定基準を調整(厳しく)するアプローチです。

例えば、本来の規格がUSLとLSLで定義されている場合、そこから内側に余裕を持たせた「実質的な判定範囲」を設定します。これにより、測定誤差による誤合格や誤不合格のリスクを低減できます。

具体的には、以下の数式に従って規格値を狭める処置をします。

■ ガードバンド(GB)の計算式

● 上側規格(USL)

GB(U) = USL − 1.93 × σGRR

● 下側規格(LSL)

GB(L) = LSL + 1.93 × σGRR

規格値を上記で算出されたものに差し替えます。
これで測定バラつきは許容したうえで、誤判定を防ぐことができます。

ただし、ガードバンドはあくまで対症療法です。
本質的には測定システムの改善が優先されるべきであり、GBは最終手段として位置づけることが重要です。

改善の進め方(実務フロー)

GRR改善は、闇雲に対策を打つのではなく、順序立てて進めることが重要です。

基本的な流れは以下の通りです。

ステップ 内容
GRRを実施する
分散の内訳を確認する
原因(繰り返し性 or 再現性)を特定する
対策を実施する
再度GRRを評価する

「評価 → 分解 → 改善 → 再評価」のサイクルが重要です。

まとめ

GRRがNGだったときに重要なのは、「数値が悪い」という事実ではなく、
どの要素が問題なのかを分解して理解することです。

繰り返し性なのか
再現性なのか
それとも両方なのか

これを見極めることで、適切な対策が打てるようになります。

また、どうしても改善が難しい場合には、ガードバンドという考え方も有効ですが、あくまで補助的な手段として扱うべきです。
Gage R&Rは評価ツールではなく、改善のためのツールです。この視点を持つことで、測定の信頼性は大きく向上します。

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