GRRがNGだったときの対処法

① はじめに

Gage R&Rを実施した結果、GRR%が30%を超えてしまった
実務では非常によくあるケースです。

このとき重要なのは、「NGだった」という事実そのものではなく、
“なぜNGになったのか”を正しく分解して捉えることです。

GRRは単なる評価指標ではなく、測定システムの問題点を明らかにするツールです。
本記事では、GRRがNGになったときに、どのように原因を切り分け、どのように改善すべきかを実務目線で解説します。

✔ あわせて読みたい
実務で使えるGage R&R活用方法【Excel付き】

MSAで最も実施される測定システム評価手法についてわかりやすく解説!(Excelフォーマット付き)


② GRRがNGとは何が起きているのか?

GRRが高いということは、測定値のばらつきの中で
測定システムが占める割合が大きい状態です。

つまり、同じものを測っているにも関わらず、結果が安定しない状態であり、
このままでは以下のような問題が発生します。

  • 工程能力(Cp / Cpk)の評価が歪む
  • 合否判定が測定者やタイミングで変わる
  • 改善活動の方向性を誤る
  • 不良が流出し、顧客で問題になる

👉 測定が不安定なままでは、どれだけ高度な分析をしても意味を持ちません。


③ 原因の切り分け(ここが最重要)

GRRがNGになったときは、必ず分散の内訳を確認します。
ポイントは、「どの要素がばらつきを支配しているか」です。

主に見るべきは以下の3パターンです。

  • 繰り返し性(Repeatability)が大きい
  • 再現性(Reproducibility)が大きい
  • 両方が大きい

この切り分けにより、改善の方向性が大きく変わります。


④ 原因別の対策

■ 繰り返し性が悪い場合(測定器起因)

同じ人が同じ条件で測定しているにも関わらずばらつく場合、
原因は主に測定器や測定方法にあります。

例えば、測定器の分解能が不足している場合や、ワークの固定方法が安定していない場合、測定圧が一定でない場合などが該当します。

この場合は、測定システムそのものを見直すことが重要です。

  • 測定器の見直し(分解能・精度)
  • 治具の導入や固定方法の標準化
  • 測定手順の統一

👉 「誰が測っても同じ結果になる状態」を作ることがゴールです。


■ 再現性が悪い場合(測定者起因)

測定者によって結果が変わる場合は、人の影響が大きい状態です。

同じ測定器を使っていても、当て方や読み取り方、判断基準の違いによって結果が変わることがあります。特に初心者と熟練者の差が大きい場合に顕著です。

この場合は、人に依存しない仕組みづくりが必要になります。

  • 作業標準書の整備
  • 測定教育の実施
  • 測定条件の明確化(力・位置・順序など)

👉 「誰が測っても同じやり方になる状態」を目指します。


■ 両方が悪い場合

繰り返し性と再現性の両方が大きい場合は、測定システム全体に問題があります。

測定器・人・方法・環境のすべてが影響している可能性があるため、個別対応ではなく、測定プロセス全体を見直す必要があります。

👉 一度ゼロベースで測定の設計を見直すことが有効です。


⑤ それでも改善できない場合:ガードバンド(GB)の考え方

現場によっては、どうしてもGRRを十分に下げられないケースもあります。
例えば、非接触測定や柔らかい材料など、物理的にばらつきが大きくなりやすい場合です。

このような場合に有効なのが、ガードバンド(Guard Band)の考え方です。

ガードバンドとは、規格値の内側に安全マージンを設け、測定誤差による誤判定を防ぐ手法です。つまり、測定の不確かさを前提にして、判定基準を調整(厳しく)するアプローチです。

例えば、本来の規格がUSLとLSLで定義されている場合、そこから内側に余裕を持たせた「実質的な判定範囲」を設定します。これにより、測定誤差による誤合格や誤不合格のリスクを低減できます。

具体的には、以下の数式に従って規格値を狭める処置をします。

■ ガードバンド(GB)の計算式

● 上側規格(USL)

GB(U) = USL − 1.93 × σGRR

● 下側規格(LSL)

GB(L) = LSL + 1.93 × σGRR

規格値を上記で算出されたものに差し替えます。
これで測定バラつきは許容したうえで、誤判定を防ぐことができます。

ただし、ガードバンドはあくまで対症療法です。
本質的には測定システムの改善が優先されるべきであり、GBは最終手段として位置づけることが重要です。


⑥ 改善の進め方(実務フロー)

GRR改善は、闇雲に対策を打つのではなく、順序立てて進めることが重要です。

基本的な流れは以下の通りです。

  • GRRを実施する
  • 分散の内訳を確認する
  • 原因(繰り返し性 or 再現性)を特定する
  • 対策を実施する
  • 再度GRRを評価する

👉 「評価 → 分解 → 改善 → 再評価」のサイクルが重要です。


■ まとめ

GRRがNGだったときに重要なのは、「数値が悪い」という事実ではなく、
どの要素が問題なのかを分解して理解することです。

  • 繰り返し性なのか
  • 再現性なのか
  • それとも両方なのか

これを見極めることで、適切な対策が打てるようになります。

また、どうしても改善が難しい場合には、ガードバンドという考え方も有効ですが、あくまで補助的な手段として扱うべきです。

Gage R&Rは評価ツールではなく、改善のためのツールです。
この視点を持つことで、測定の信頼性は大きく向上します。

✔ あわせて読みたい
MSAとは?測定システム解析をわかりやすく解説【Gauge R&R・TMVとの関係】

測定システムの妥当性評価”MSA”について体系的にわかりやすく解説!(最初に読みたい)

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール