
一元配置分散分析では、1つの因子による平均値の違いを調べました。しかし製造現場では、製品寸法に「加工条件」と「材料」の両方が影響するなど、複数の因子が同時に関係することがあります。
このような場面で使うのが、二元配置分散分析(Two-way ANOVA)です。この記事では、2つの主効果と交互作用の考え方を、製造業のデータと実際の計算を使ってわかりやすく解説します。
□ 二元配置分散分析では、2つの因子を同時に評価できる
□ 各因子の「主効果」に加えて「交互作用」を評価できる
□ 全変動を4つに分け、誤差に対する大きさをF値で比較する
□ 交互作用が有意な場合は、主効果だけで結論を出さない
二元配置分散分析とは?
二元配置分散分析とは、2つの因子が1つの数値データに与える影響を同時に調べる方法です。「二元」は、調べる因子が2つあることを表します。
たとえば、因子Aを「加工条件」、因子Bを「材料」とすると、次の3つを1回の分析で評価できます。
・加工条件の主効果:材料を平均しても、加工条件によって製品寸法が変わるか
・材料の主効果:加工条件を平均しても、材料によって製品寸法が変わるか
・交互作用:加工条件の効果が、材料によって変わるか
因子が1つの場合は、一元配置分散分析を使います。二元配置分散分析は、その考え方を2つの因子へ広げた方法です。
二元配置分散分析はどんなときに使う?
二元配置分散分析は、結果に関係しそうなカテゴリ変数が2つあり、目的変数が寸法・強度・重量などの数値であるときに使います。
| 調べたいこと | 因子A | 因子B | 目的変数 |
|---|---|---|---|
| 加工条件と材料の影響 | 加工条件 | 材料 | 製品寸法 |
| 設備と作業者の影響 | 設備 | 作業者 | 加工時間 |
| 温度と保持時間の影響 | 温度 | 保持時間 | 引張強度 |
2つの因子を別々に分析すると、組合せによって生じる交互作用を見落とすことがあります。実務では、実験計画の段階から各水準の組合せにデータを割り付けることが大切です。
二元配置分散分析の考え方
分散分析では、データ全体のばらつきを「説明できる変動」と「説明できない誤差」に分けます。二元配置では、説明できる変動をさらに因子A、因子B、交互作用の3つに分けます。
それぞれの変動は「平方和」で表します。各平方和を自由度で割って平均平方を求め、因子による平均平方が誤差の平均平方より十分大きいかをF値で判断します。

交互作用とは?
交互作用とは、因子Aの効果が、因子Bの水準によって変わることです。たとえば、加工条件Aが材料1では良い結果でも、材料2では良い結果にならない場合、加工条件と材料の間に交互作用があると考えます。
交互作用がない
材料が変わっても、加工条件の効果はほぼ同じです。
交互作用がある
材料によって、加工条件の効果の方向や大きさが変わります。
!重要
交互作用が有意な場合、全材料を平均した主効果だけでは実態を表せないことがあります。材料別に加工条件を比較するなど、単純主効果や組合せごとの平均値を確認します。
事例:2つの因子が製品寸法に与える影響を調べる

ある工程で、加工条件と材料が製品寸法に影響しているかを調べます。因子Aは加工条件(A・B・C)、因子Bは材料(材料1・材料2)とし、各組合せで3個ずつ測定しました。
このデータから、統計的に有意に影響する因子と、その影響の傾向を分散分析により明らかにします。
| 加工条件 | 材料 | 測定1 | 測定2 | 測定3 | セル平均 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 材料1 | 9 | 10 | 11 | 10.0 |
| A | 材料2 | 14 | 15 | 16 | 15.0 |
| B | 材料1 | 12 | 13 | 14 | 13.0 |
| B | 材料2 | 13 | 14 | 15 | 14.0 |
| C | 材料1 | 15 | 16 | 17 | 16.0 |
| C | 材料2 | 12 | 13 | 14 | 13.0 |
① 各条件の平均値と全体平均を求める
まず、各組合せのセル平均、各因子の周辺平均、全18個の全体平均を求めます。周辺平均は、もう一方の因子の水準をまとめた平均です。
| 加工条件 | 材料1の平均 | 材料2の平均 | 加工条件の平均 |
|---|---|---|---|
| A | 10.0 | 15.0 | 12.5 |
| B | 13.0 | 14.0 | 13.5 |
| C | 16.0 | 13.0 | 14.5 |
| 材料の平均 | 13.0 | 14.0 | 全体平均 13.5 |
材料1では加工条件Cが最も大きい一方、材料2では加工条件Aが最も大きくなっています。この時点でも交互作用がありそうだと予想できます。
② 全変動を求める
全変動は、各測定値が全体平均13.5からどれだけ離れているかを二乗して合計したものです。データ全体のばらつきの大きさを表します。
③ 因子A(加工条件)の平方和を求める
加工条件の平方和は、加工条件ごとの平均が全体平均からどれだけ離れているかを表します。各加工条件には「材料2水準 × 3回=6個」の測定値があるため、その個数を掛けます。
= 12.0
④ 因子B(材料)の平方和を求める
材料の平方和は、材料ごとの平均が全体平均からどれだけ離れているかを表します。各材料には「加工条件3水準 × 3回=9個」の測定値があります。
= 4.5
⑤ 交互作用の平方和を求める
交互作用の平方和は、各セル平均から「加工条件の効果」と「材料の効果」を差し引いても残る、組合せ特有の変動です。各セル3回測定なので、偏差平方和に3を掛けます。
=(-2, 2, 0, 0, 2, -2)
SAB = 3{(-2)²+2²+0²+0²+2²+(-2)²} = 48.0
交互作用の平方和48.0は、加工条件や材料の平方和より大きくなっています。組合せによる変化が、このデータのばらつきを強く説明していることがわかります。
⑥ 誤差平方和を求める
誤差平方和は、同じ加工条件・同じ材料の中に残るばらつきです。各測定値と、そのセル平均との差を二乗して合計します。
SE = 2 × 6セル = 12.0
確認すると、12.0+4.5+48.0+12.0=76.5となり、4つの平方和の合計は全平方和と一致します。
⑦ 自由度を求める
加工条件の水準数をa=3、材料の水準数をb=2、繰り返し数をn=3とします。自由度は、各変動を独立に表せる情報の数です。
| 変動要因 | 自由度の式 | 自由度 |
|---|---|---|
| 因子A | a-1 | 2 |
| 因子B | b-1 | 1 |
| 交互作用 | (a-1)(b-1) | 2 |
| 誤差 | ab(n-1) | 12 |
| 全体 | abn-1 | 17 |
⑧ 平均平方を求める
平均平方は、平方和を対応する自由度で割った値です。変動要因ごとのばらつきを、自由度の違いを考慮して比較できる形にします。
MSAB=48.0÷2=24.0 MSE=12.0÷12=1.0
⑨ F値を求める
F値は、各効果の平均平方を誤差の平均平方で割った値です。F値が大きいほど、偶然のばらつきだけでは説明しにくい効果だと考えます。
FB=4.5÷1.0=4.5
FAB=24.0÷1.0=24.0
⑩ p値を求める
p値は、「本当は効果がない」と仮定したとき、今回のF値以上が得られる確率です。F分布から求めると、加工条件は0.0156、材料は0.0554、交互作用は0.000064となります。
有意水準を5%とすると、加工条件と交互作用は有意、材料は有意ではありません。ただし交互作用が有意なので、加工条件の主効果だけを単純に解釈せず、材料別の結果を確認します。
分散分析表にまとめる
ここまでの計算を分散分析表にまとめると、次のようになります。
| 変動要因 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 | F値 | p値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 因子A:加工条件 | 12.0 | 2 | 6.0 | 6.0 | 0.0156 |
| 因子B:材料 | 4.5 | 1 | 4.5 | 4.5 | 0.0554 |
| 因子A×因子B | 48.0 | 2 | 24.0 | 24.0 | 0.000064 |
| 誤差 | 12.0 | 12 | 1.0 | - | - |
| 全体 | 76.5 | 17 | - | - | - |
結果をどう解釈する?
分散分析表から、以下を解釈することができます。
・加工条件:p=0.0156であり、全材料を平均すると加工条件間に有意差があります。
・材料:p=0.0554であり、5%水準では材料間の主効果は有意ではありません。
・交互作用:p=0.000064であり、加工条件の効果は材料によって有意に変わります。
材料1では加工条件A→B→Cの順に寸法が大きくなりますが、材料2では加工条件Aが最大で、Cでは小さくなっています。したがって、「加工条件Cが常に最も大きい」とは言えず、材料ごとに適切な加工条件を選ぶ必要があります。
要因効果プロットも重要
二元配置分散分析では、分散分析表のp値だけでなく、主効果プロットや交互作用プロットを確認すると、各因子が目的変数にどのような影響を与えているかを視覚的に理解できます。
■主効果プロット
主効果プロットは、各因子の水準によって目的変数の平均値がどのように変化するかを確認するグラフです。因子Aでは材料をまとめた平均値、因子Bでは加工条件をまとめた平均値を点で示します。

加工条件の平均値はA=12.5、B=13.5、C=14.5で、AからCへ上昇しています。分散分析表でも因子Aの主効果はp=0.0156で有意であり、プロットからも水準間の変化を視覚的に確認できます。
材料の平均値は材料1=13.0、材料2=14.0で、差は1.0です。ただし因子Bのp値は0.0554であるため、5%水準では材料の主効果が有意とは判断しません。プロットの傾きだけで統計的有意性を判断しないことが重要です。
■交互作用プロット
交互作用プロットは、因子Aの効果が、因子Bの水準によって変わるかを見るグラフです。線がおおむね平行なら交互作用が小さい可能性があり、傾きが大きく異なる場合や線が交差する場合は交互作用が示唆されます。

材料1では加工条件A→B→Cに伴って平均値が10.0→13.0→16.0と上昇します。一方、材料2では15.0→14.0→13.0と低下しており、2本の線は交差しています。
分散分析表では交互作用A×Bのp値が0.000064で有意です。そのため、因子Aには主効果が見られても、「加工条件をAからCへ変えれば常に寸法が大きくなる」と単純には解釈できません。材料ごとに加工条件の効果を確認する必要があります。
線の交差や傾きの違いだけで交互作用の有意性を断定することはできません。プロットは結果を視覚的に理解するために使い、統計的な判断は分散分析表のp値と合わせて行います。
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同じ分析は、無料統計ソフトStat Lab Analyticsでも実行できます。分散分析表だけでなく、交互作用プロットや多重比較も確認できます。
二元配置分散分析を使うときの注意点

正規性
各組合せにおける誤差が、おおむね正規分布に従うことを仮定します。データ数が少ない場合は正規性検定だけに頼らず、残差のヒストグラムやQ-Qプロット、外れ値も確認します。
データが正規分布に従っているか確認する方法とは?正規性検定の考え方からExcelを使った実践方法までわかりやすく解説!
等分散性
各組合せのばらつきが、おおむね等しいことを仮定します。特定の組合せだけ標準偏差が極端に大きい場合は、測定条件やデータ変換、別の解析方法を検討します。
独立性
各測定値は互いに独立である必要があります。同じ製品を繰り返し測定した値や、時間順に強く依存するデータを独立なサンプルとして扱わないよう注意します。
交互作用が有意な場合の解釈
交互作用が有意なら、一方の因子の効果はもう一方の因子によって変わります。主効果の平均値だけで結論を出さず、交互作用プロット、セル平均、材料別・加工条件別の単純主効果を確認します。
繰り返しのないデータでは交互作用を分離できない
各組合せに測定値が1つしかない場合、通常の二元配置分散分析では交互作用と誤差を分けて評価できません。交互作用を調べたい場合は、原則として各組合せで複数回測定する計画にします。
まとめ
二元配置分散分析は、2つの因子が数値データに与える影響を同時に評価する方法です。因子Aと因子Bの主効果だけでなく、組合せによる交互作用も調べられる点が一元配置分散分析との大きな違いです。
✅全変動を、因子A・因子B・交互作用・誤差の4つに分解します。
✅各平均平方を誤差の平均平方と比較し、F値とp値を求めます。
✅交互作用が有意な場合は、主効果だけでなく組合せごとの平均値を確認します。
✅製造業では、加工条件×材料、設備×作業者、温度×保持時間などの評価に活用できます。
まず一元配置分散分析の考え方を理解し、その延長として「2つの因子と交互作用」に注目すると、二元配置分散分析の結果を読み取りやすくなります。
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