平均・分散・標準偏差とは?統計の基本指標をわかりやすく解説【統計基礎】

はじめに

平均・分散・標準偏差は、統計を学ぶうえで最初に理解したい基本指標です。平均はデータの中心を表しますが、平均だけではデータの状態を十分に説明できません。

例えば、データAが「9, 10, 10, 10, 11」、データBが「2, 5, 10, 15, 18」だったとします。どちらも平均は10ですが、データAは10付近に集まり、データBは広くばらついています。

つまり、平均が同じでも、データのばらつきが違えば、そのデータが持つ意味は大きく異なります。この記事では、平均を「中心」、分散を「ばらつきの数値化」、標準偏差を「元データと同じ単位で見たばらつき」として、初心者向けに整理します。

▼この記事でできるようになること
✓ 平均・分散・標準偏差の違いを理解できます。
✓ 実際のデータから平均・分散・標準偏差を求める考え方が分かります。
✓ 母分散と標本分散の違いを理解できます。
✓ Stat Lab Analyticsを使って、自分のデータの基本統計量を確認できます。

平均・分散・標準偏差の違い

詳細な計算に入る前に、まず3つの指標の役割を整理しておきましょう。

平均は「データの中心」、分散と標準偏差は「データのばらつき」を表す指標です。

たとえば、2つのデータで平均が同じだったとしても、それだけでデータの特徴が同じとは限りません。平均付近に値が集中している場合もあれば、平均から大きく離れた値が多く含まれている場合もあります。

そこで、平均だけでなく「どの程度ばらついているのか」を表す分散や標準偏差をあわせて確認します。

分散と標準偏差はどちらもばらつきを表しますが、分散は元のデータの単位を2乗した値になるのに対し、標準偏差は元のデータと同じ単位で表せるという違いがあります。そのため、実際のデータのばらつきを直感的に確認するときには、標準偏差がよく使われます。

指標 何を表す? 単位 初心者向けの見方
平均 データの中心 元データと同じ データはどのあたりにある?
分散 ばらつき 元データの単位2 どの程度ばらついている?
標準偏差 ばらつき 元データと同じ ばらつきを元の単位で確認

平均とは?

平均とは、データ全体の中心的な位置を表す代表値です。複数のデータをひとつの値で要約し、「データがおおよそどのあたりに集まっているのか」を確認したいときに使います。

たとえば、製品の寸法を何回か測定した場合、測定値には多少のばらつきが生じます。このようなときに平均を求めることで、複数の測定結果をひとつの代表的な値として捉えることができます。

■ 平均の数式

平均は、数式では次のように表すことができます

FORMULA
x ¯ = x 1 + x 2 + + x n n
すべてのデータを足して、データ数で割ります。
FORMULA
x ¯ = 1 n i = 1 n x i
Σは「合計する」という意味です。xᵢは各データ、nはデータ数を表します。

■ 平均の求め方

平均は、すべてのデータを足し合わせ、その合計をデータ数で割ることで求めます。
事例として計算過程も含めて紹介します

データAの平均を計算してみよう
データ:9, 10, 10, 11, 10
STEP 1
すべてのデータを足す
9 + 10 + 10 + 11 + 10 = 50
STEP 2
合計をデータ数で割る
50 ÷ 5 = 10
計算結果
平均 = 10
※平均は、すべてのデータの合計をデータ数で割ることで求めます。

分散とは?

分散とは、データが平均からどの程度ばらついているかを数値化した指標です。平均だけでは分からない、データの広がりを確認するために使います。

■ 分散の数式

FORMULA
σ 2 = i = 1 N ( x i μ ) 2 N
母分散の式です。μは母平均、Nは母集団サイズを表します。

■ 分散の求め方

分散は、それぞれのデータが平均からどのくらい離れているのかをもとに計算します。

例として、データA「9, 10, 10, 11, 10」を使って分散を求めてみましょう。

データAの分散を計算してみよう
データ:9, 10, 10, 11, 10 | 平均:10
STEP 1
平均との差を求める
データ 9 10 10 11 10
平均との差 −1 0 0 +1 0
差の2乗 1 0 0 1 0
STEP 2
2乗した値を合計する
1 + 0 + 0 + 1 + 0 = 2
STEP 3
データ数で割る
2 ÷ 5 = 0.4
計算結果
母分散 = 0.4
※ここでは、5個のデータを母集団全体として扱っているため、平均との差の2乗和「2」をデータ数「5」で割っています。

■ 分散はなぜ「平均との差を2乗」するのか?

各データから平均との差を求めると、平均より小さい値はマイナス、平均より大きい値はプラスになります。そのまま合計すると、プラスとマイナスが打ち消し合ってしまいます。

平均との差 2乗した値 意味
−1 (−1)2 = 1 平均から1だけ離れている
0 02 = 0 平均と同じ
+1 (+1)2 = 1 平均から1だけ離れている

このように2乗すると、マイナス方向のズレもプラス方向のズレも、どちらも「平均から離れている量」として扱えます。

標準偏差とは

標準偏差とは、分散の平方根を取った値です。分散は単位が二乗になるため、元データと同じ単位でばらつきを見たいときに標準偏差を使います。

■標準偏差の数式

FORMULA
σ = σ 2
母標準偏差は、母分散の平方根です。
FORMULA
s = s 2
標本標準偏差は、標本分散(不偏分散)の平方根です。

標準偏差は「平均からの距離の単純平均」ではありません。標準偏差が小さいほどデータは平均付近に集まり、大きいほど広くばらついていると考えます。

■ 標準偏差の求め方

データAの標準偏差を計算してみよう
データ:9, 10, 10, 11, 10
母集団として扱う場合
母分散 0.4 の平方根を取る
√0.4 0.632
母標準偏差 = 約0.632
標本として扱う場合
標本分散 0.5 の平方根を取る
√0.5 0.707
標本標準偏差 = 約0.707
POINT
標準偏差 = 分散の平方根
※母分散からは母標準偏差、標本分散(不偏分散)からは標本標準偏差を求めます。

では、なぜ分散の平方根を取るのでしょうか。

分散は「平均との差」を2乗して計算するため、元のデータとは単位が異なります。例えば、元のデータの単位が「mm」であれば、分散の単位は「mm²」になります。

そこで、分散の平方根を取って元のデータと同じ単位に戻したものが標準偏差です。

そのため、実際のデータのばらつきを確認するときには、分散よりも標準偏差の方が直感的に理解しやすくなります

平均が同じでも標準偏差が違うと何が変わる?

平均が同じでも、標準偏差が違うとデータの見え方は大きく変わります。平均は中心を示しますが、標準偏差はその中心の周りにどの程度データが広がっているかを示します。

製造業では、平均寸法が目標値に近くても、ばらつきが大きいと規格外品が出やすくなる可能性があります。平均と標準偏差は、セットで確認することが重要です。

母分散と標本分散の違い|nとn−1はどう使い分ける?

分散には、母分散と標本分散(不偏分散)があります。手計算とExcelや統計ソフトで値が違って見えることがあるのは、この分母の違いが原因になることがあります。

種類 分母 主な考え方
母分散 N 手元のデータを母集団全体として扱う
標本分散(不偏分散) n−1 標本から母集団の分散を推定する

データA「9, 10, 10, 11, 10」を例にすると、母分散は0.4、母標準偏差は約0.632です。一方、標本分散(不偏分散)は0.5、標本標準偏差は約0.707です。

計算の種類
母分散 0.4
母標準偏差 √0.4 ≈ 0.632
標本分散(不偏分散) 0.5
標本標準偏差 √0.5 ≈ 0.707

初心者の段階では、まず「手元のデータ全体として見る場合はN」「標本から母集団を推定する場合はn−1」と整理すると理解しやすくなります。

製造業・品質管理ではどう使う?

製造業では、製品寸法、重量、強度、温度、加工時間など、さまざまなデータで平均と標準偏差を確認します。平均は目標値や規格中心とのズレを見るために使い、標準偏差はばらつきの大きさを見るために使います。

ただし、平均と標準偏差だけで「工程が安定している」と断定しないように注意が必要です。工程能力と工程の安定性は、役割が異なります。

項目 確認すること 代表的な確認方法
工程能力 規格幅に対して工程のばらつきが十分小さいか、平均が規格中心からどの程度ずれているか Cp・Cpkなど
工程の安定性 時間的に工程が統計的管理状態にあるか 管理図など

つまり、平均と標準偏差は品質管理の入口として重要ですが、規格との関係を見るなら工程能力分析、時間的な安定性を見るなら管理図も合わせて確認します。

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Excelで求める方法

平均・分散・標準偏差は、Excelの関数を使えば簡単に求めることができます。

ここでは、これまで使用してきたデータ「9, 10, 10, 11, 10」が、Excelのセル A2~A6 に入力されている場合を例に確認してみましょう。

平均には「AVERAGE」、分散には「VAR.P」「VAR.S」、標準偏差には「STDEV.P」「STDEV.S」を使用します。

以下の関数は、そのままコピーしてExcelに貼り付けて使用できます。

Excelで平均・分散・標準偏差を求める
データ範囲:A2:A6
平均
=AVERAGE(A2:A6)
計算結果:10
母分散
=VAR.P(A2:A6)
計算結果:0.4
標本分散(不偏分散)
=VAR.S(A2:A6)
計算結果:0.5
母標準偏差
=STDEV.P(A2:A6)
計算結果:約0.632
標本標準偏差
=STDEV.S(A2:A6)
計算結果:約0.707

Excelでは、母集団全体として計算する場合は「.P」、母集団から取り出した標本として計算する場合は「.S」の関数を使用します。
例えば、母分散なら「VAR.P」、標本分散なら「VAR.S」です。標準偏差についても同様に「STDEV.P」と「STDEV.S」を使い分けます。

実際のデータ分析では、手計算するよりもExcelなどのツールを利用することが一般的ですが、計算の仕組みを理解しておくことで、結果の意味も理解しやすくなります。

まとめ

平均はデータの中心を表し、分散と標準偏差はデータのばらつきを表します。平均だけでは、データが中心付近に集まっているのか、広くばらついているのかは分かりません。

分散は平均との差を2乗して平均した値で、標準偏差は分散の平方根です。標準偏差にすることで、元データと同じ単位でばらつきを確認できます。

また、母分散と標本分散では分母が異なります。Excelや統計ソフトで値が違って見える場合は、Nで割っているのか、n−1で割っているのかを確認しましょう。

品質管理では、平均と標準偏差を入口としてデータの中心とばらつきを把握し、必要に応じて工程能力分析や管理図へ進むことが大切です。

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