データの対応あり・対応なしとは?|見分け方と検定手法の違いをわかりやすく解説

統計解析を学んでいると、

「対応のあるt検定」
・「対応のないt検定」

といった言葉を目にすることがあります。また、実務で統計解析を行う際にも、「このデータは対応ありですか?」「対応なしですか?」と確認されることがあります。

実際に筆者も品質管理や統計解析業務の中で、この対応関係を考慮して検定方法を選択することが多々あります
特に医療機器や製薬業界では、データの対応関係を正しく理解することが非常に重要です。

では、この「データの対応」とは何でしょうか?
本記事では、データの対応あり・対応なしの考え方と、それによって変わる統計手法についてわかりやすく解説します。

データの対応あり・対応なしとは?

違いを一言で言うと、同じ対象を繰り返し測定したデータかどうかがポイントになります。
統計解析で扱うデータには大きく分けて以下の2種類があります。

・同じ対象を繰り返し測定したデータ(対応あり)
・別々の対象を測定したデータ(対応なし)

この違いを「データの対応関係」と呼びます(ちなみに、英語ではpaired-data / unpaired-dataと呼びます)。
それぞれのケースについて具体例を見ていきましょう。

データの対応があるケース

対応ありとは、データ同士を1対1で対応付けられる場合を指します。
言い換えると、「同じ対象を複数回測定している」ケースです。

対応ありのデータの特徴としては、2群間のデータ数は必ず同じになる点があります。
(データ同士が1対1に対応付けられるので当然ですよね)

以下に具体的な事例を2つ用意しましたので、理解を深めていきましょう。

◆製薬の臨床試験

例えば、新薬の効果を確認するために同じ被験者へプラセボ薬と新薬を投与し、血圧を比較するとします。

被験者 プラセボ薬投与後の血圧 新薬投与後の血圧
A 148 138
B 155 144
C 142 133
D 160 149
E 150 141

この場合、

・被験者Aのプラセボ薬結果 ↔ 被験者Aの新薬結果
・被験者Bのプラセボ薬結果 ↔ 被験者Bの新薬結果

のように、1対1で対応付けることができます。
(横並びのデータは、同じ被験者に異なる薬を投与した関連性を持つわけです)

つまり対応ありデータです。
このような解析では、被験者ごとの個人差を考慮できるため、統計的な検出力が高くなる特徴があります。
また、この事例で適切な統計手法は「対応のあるt検定」になります。

◆改善前後の不良率比較

品質管理の現場でも対応ありデータは頻繁に登場します。
例えば設備改善前後で不良率を比較するケースです。

製造ライン 改善前の不良率(%) 改善後の不良率(%)
ラインA 4.8 2.9
ラインB 5.2 3.4
ラインC 4.5 2.8
ラインD 5.7 3.6
ラインE 4.9 3.0

同じラインを改善前後で比較しているため、ラインAの改善前 ↔ ラインAの改善後という対応関係が存在します。
(これもかみ砕くと、横並びのデータは「同じラインで測定した」という関連性を持っていると解釈できるわけです)
したがって、このケースも対応ありデータとなります。

この事例においても、不良率の値を比較する場合は「対応のあるt」もしくは「Wilcoxon符号付順位検定」が適切です。

データの対応がないケース

対応なしとは、データ同士を1対1で結び付けることができない場合を指します。
つまり、異なる対象同士を比較しているケースです。

以下の事例を元に、「対応がないケース」とはどんなデータのとり方を指すのかについて学んでいきましょう!
(教科書通りの説明を見るより、事例で確認したほうが理解が容易です)

◆男女の身長比較

20代男女の身長を測定し比較する例を考えます。

男性 身長(cm) 女性 身長(cm)
男性A 172 女性A 158
男性B 175 女性B 162
男性C 168 女性C 155
男性D 181 女性D 160
男性E 177 女性E 164
男性F 170 女性F 157
男性G 174 女性G 161
男性H 179 女性H 159

この場合、男性Aと女性Aというような対応関係は存在しません(同じAさんで男性/女性を連れてくることができないからです)。

単に男性グループと女性グループを比較しているだけです。
この時2群の横並びのデータ間には関連性がないため、したがって対応なしデータとなります。

◆新人とベテランの作業時間比較

製造現場では新人作業者とベテラン作業者の作業時間を比較することがあります。

新人作業者 作業時間(分) ベテラン作業者 作業時間(分)
新人A 28 ベテランA 18
新人B 31 ベテランB 17
新人C 26 ベテランC 19
新人D 29 ベテランD 16
新人E 27 ベテランE 18

この時、新人A ↔ ベテランAという関係はありません
(新人AさんとベテランAさんは全くの別人で、データの名称として同じ”A”がついているだけだからです)

つまりこのデータでは、1対1で対応付けることができないためです。
このような場合も対応なしデータとなります。

対応あり・対応なしを見極めるコツ

ここまでで対応あり・対応なしのイメージは掴めたでしょうか。
しかし実務になると迷うことも少なくありません

そんなときは次の質問をしてみてください。「同じ対象を繰り返し測定していますか?」
答えが YES なら” 対応あり” 、 NO なら” 対応なし”です。
非常にシンプルですが、多くのケースはこれで判断できます。

また、サンプル数が同じだから対応ありというわけではありません。※ここ重要!
重要なのは人数ではなく、1対1で対応付けできるかどうかです。
データを表にまとめた際に、横並びのデータに関連性があるかどうか、この観点で見るようにしましょう!

対応あり・対応なしで使う検定は変わる

実は対応あり・対応なしによって、使用する統計手法は異なります。

もし間違った手法を選択すると、

・本当は差があるのに検出できない
・本当は差がないのに差があると判断してしまう

といった問題が発生する可能性があります。統計解析を行う前に対応関係を確認することは非常に重要です。
代表的な検定手法をまとめると以下のようになります。

目的 対応なし 対応あり
2群の平均値比較 対応のないt検定 対応のあるt検定
2群の中央値比較
(ノンパラメトリック)
Mann-Whitney U検定 Wilcoxon符号付順位検定
2群の比率比較 χ²検定
(カイ二乗検定)
McNemar検定
(マクネマー検定)
3群以上の平均値比較 一元配置分散分析 反復測定分散分析

まとめ

データの対応あり・対応なしは、統計解析において非常に重要な考え方です。

ポイントを整理すると、以下になります。

✅対応あり=同じ対象を繰り返し測定したデータ
✅対応なし=異なる対象同士を比較したデータ
✅判断基準は「1対1で対応付けできるか」
✅対応関係によって使用する検定手法が変わる
✅間違った検定を選ぶと誤った結論につながる

統計解析を始める前に、「このデータは対応ありか?対応なしか?」を確認する習慣をつけるようにしましょう。
それにより適切な場面で、適切な方法を選択できるようになります。

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