
はじめに
皆さん、品質改善や工程管理で「管理図」は使用していますか?
管理図とは、工程が安定状態にあるかどうかを統計的に判断するためのツールです。
QC7つ道具の1つとしても知られており、製造業では非常によく使われています。そんな管理図ですが、実務では少しもったいない運用をされていることがあります。
多くの場合、「管理限界線を超えたかどうか」だけを見て終わってしまっているのです。
確かに、管理限界線(Ave±3σ)を超えた場合は、統計的には0.3%程度しか起こらない珍しい現象です。そのため、そのロットや工程について抜き取り確認を行い、異常があれば波及範囲を調査する、という使い方は非常に重要です。
しかし、異常の予防という観点では、それだけでは不十分です。実は管理図には、管理限界線の内側にデータが収まっていても、「何かおかしい動き方をしている」と判断するためのルールがあります。
それが、「8つの異常判定ルール」です。
この記事では、管理図を使うならぜひ知っておきたい「8つの異常判定ルール」について、分かりやすく解説します。
管理図とは
ここで、管理図について簡単におさらいします。
管理図とは、工程が安定した状態であるかを判断するための手法で、品質特性値が「偶然原因」のみでばらついているのか、「異常原因」によってばらついているのかを統計的に判断します。
代表的なシューハート管理図は、以下の図で示すように横軸をロットや日などの“群”とし、縦軸を品質特性値(製品寸法、重量、濃度など)をプロットしたグラフです。
品質特性値には、例えば以下のようなものがあります。
| 名称 | 主な単位 |
|---|---|
| 製品寸法 | mm |
| 重量 | g、kg |
| 濃度 | %、ppm |
| 温度 | ℃ |
| 圧力 | MPa、Pa |
管理図には、
・中心線(CL)
・上側管理限界線(UCL)
・下側管理限界線(LCL)
が引かれます。そして、点がUCLやLCLを超えた場合は、異常原因によるばらつきが発生したと判断します。
用語:偶然原因と異常原因
| 名称 | 意味 |
|---|---|
| 偶然原因 | 標準的な方法で製造していても避けられない自然なばらつき |
| 異常原因 | 設備異常、条件変更、作業ミスなどによって起こる異常なばらつき |
異常判定には大きく2種類ある
せっかく管理図を作っても、正確に読み取れなければ意味がありません。
工程が管理状態にあると判断する基本的な考え方は、次の2つです。
①点がすべて管理限界内に収まっている
②点の並び方にクセがない
特に重要なのが、2つ目の「点の並び方」です。管理限界線の中に収まっていても、点が片側に偏っていたり、連続して増加していたりすると、将来的に異常につながる可能性があります。
そこで役立つのが、8つの異常判定ルールです。
8つの異常判定ルール
以下管理図の点の動きのパターンについて、8つの判定ルールを示します。
※これはJIS Z 9020-2:2016に示されている判定基準です
ルール1:ある点が管理限界線を超える
最も基本的なルールです。
1点でもUCLまたはLCLを超えた場合は、異常原因によるばらつきが発生した可能性が高いと判断します。この場合は、設備異常や条件変更、作業ミスなどが起きていないか確認します。

ルール2:9点が中心線に対して同じ側に並ぶ
連続した9点がすべてCLより上側、または下側に並ぶ状態です。
管理限界線内であっても、平均値がずれている可能性があります。
例えば、設備調整後に全体的に寸法が高めに出るようになった場合などが該当します。

ルール3:6点が連続して増加または減少している
6点以上が連続して増加、または減少している場合です。
これは工程にトレンドがあることを示しています。例えば、工具摩耗により徐々に寸法が大きくなっている場合などが考えられます。
将来的に管理限界線を超える前兆になるため、早めに対策したいパターンです。

ルール4:14点が交互に増減している
14点が「上がる→下がる→上がる→下がる」のように交互に変動している状態です。
これは、測定方法やサンプリング方法に問題がある場合に起こることがあります.。例えば、測定者が2人いて、片方は高め、片方は低めに測るクセがある場合などです。

ルール5:連続する3点中、2点が2σ限界線を超えている
連続した3点のうち、2点以上がCLから2σ以上離れた位置にある場合です。
まだ3σの管理限界線は超えていなくても、かなり極端な値が続いている状態です。異常の初期段階として捉えることができます。

ルール6:連続する5点中、4点が1σ限界線を超えている
連続した5点のうち、4点以上が1σを超えて片側に寄っている場合です。
1点1点はそれほど異常に見えなくても、まとまって偏っている場合は、平均値がずれている可能性があります。

ルール7:連続する15点が中心線から1σ線の間にある
15点すべてがCL付近の狭い範囲に集中している状態です。
一見すると安定しているように見えますが、逆にばらつきが小さすぎるため不自然な場合があります。例えば、データを丸めすぎていたり、測定分解能が粗かったりすると、このようなパターンになります。

ルール8:連続する8点が1σ線を超えている
8点連続で、すべてがCLから1σ以上離れている状態です。
つまり、中心付近に全く点が現れない状態です。これは、複数の異なる母集団が混ざっている場合や、工程条件が途中で切り替わっている場合に発生することがあります。

8つのルールを使うメリット
これらの補足ルールを使うことで、単純に「管理限界線を超えたかどうか」だけでは見つからない異常の兆候を捉えることができます。
特に、
・工程悪化の前兆を早く見つけたい
・管理限界線を超える前に対策したい
・設備異常や条件変化を早期に把握したい
という場合には非常に有効です。
まとめ
管理図は、単にUCLやLCLを超えたかどうかを見るだけのツールではありません。
データの並び方や偏り方を見ることで、工程の異常を早期に発見することができます。特に、8つの異常判定ルールを理解しておくと、管理限界線を超える前の段階で異常の兆候を捉えられるようになります。
実務では、
・管理限界線を超えたか
・点の並び方にクセがないか
の両方を見ることが重要です。ぜひ、日々の工程管理や品質改善に役立ててみてください!
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